Camera&LensReview

Sorry Japanese only so far. Camera and lens review from photographer's viewpoint.

Leica Q2 レビュー

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イカQ2 Review ブログ
 

はじめに
昨年の夏、ヨーロッパに旅する機会があり、当初α9+標準ズームを基本にシステムを組むつもりで準備していた。そこへヨーロッパに熱波襲来の報。小ぶりのQへの変更を検討するが、せっかくの機会だし広角も標準も使いたい、けどQのデジタルクロップの50mmはありえないのでやっぱりα9か、けど重いと絶対いやになるし・・・と延々に悩むはめに。ふと脳裏に浮かぶQ2という危険な答えを、供給不足という噂でなんとか打ち消しながら気がつくと出発前日。アポの合間の時間にふと立ち寄った某店でQ2の待ち期間を尋ねたら「いまこの瞬間でしたら1台用意できます」という悪魔のささやき。当然のごとく店を出るときは紙袋をぶら下げていたのだった。

あいかわらず高い完成度
そんなわけで急遽前日手に入れたQ2は、全くテスト撮影もしないまま機内持ち込みバッグに詰め込まれる。取説は付属せずなんとpdfダウンロード方式になっていたので急ぎiPhoneに取り込み。準備にばたばたし、ゆっくり触ったのは飛行機に乗ってから。しかし、気圧の低い機内でワインを飲みながらメニュー画面いじったりiPhoneで取説読んだりしていると急激に眠気に襲われ爆睡。その後は入国準備やらチェックインやらでバタバタし、はじめてまともにカメラに向き合っのは、ロンドンの街にカメラを持って立ったときだった。

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Leica Q2

 

これまで何度も新機種購入という機会に恵まれたが、ここまで慌ただしいのは初めてだ。ほとんどいじる暇もなく、いきなりストリートに立って撮影本番。しかしQを使っていたため、なんの違和感もない。というか、大好きなロンドンの街を楽しく撮影しているうちに、新しいQ2で撮っているということをすぐに忘れてしまった。撮ってる限りQと何も変わらない。そりゃあ、シャッター音は少し静かだ。だけど雑踏では違いが分からない。EVFもきれいになってる。でもそんなに大きく違わないのですぐ慣れてしまう。少し重いはずだがほとんど差を感じない。特に純正グリップを付けていると重さの違いはほとんど意識できない。そう、いつもの大好きなQと一緒だ。僕はいつもの通り、街の雰囲気を味わいながらシャッターを切り続けた。

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Leica Q2

 

やっぱりQはいいカメラだ。ほんと心地よい。いや違ったQ2だ。そう、自分は今、買いたてのQ2を使っているのだ。なのに新しいカメラを使っている時の少しくすぐったいような高揚感は皆無だ。いつもの如くカメラの存在を忘れてひたすら撮影に没頭する。それくらいQは、そしてQ2は完成度が高いのだ。

 

気づいた点
しばらく使ってのQ2の印象は、やはり以前まとめたQの印象と全く同じ。素晴らしいカメラだ。しかし一応新機種だ。体感的によくなったことをまとめると、

  • 電池持ちが圧倒的に改善。供給不足でスペアバッテリーを入手できなかったが一日中撮り歩いても不安なし
  • 雑踏では分からないが室内ではシャッター音がさらにマイルドになったことを実感。場の雰囲気を壊さず撮影可能
  • 暗所性能が明らかに向上。Qでは高ISOで撮影しシャドーを持ち上げると帯状のノイズが出ることがあったがQ2では改善
  • サムホイールをワンプッシュしてISOダイアルにするインターフェスは使い勝手最高

といったあたり。耐候性が上がったことは当然体感はできなかったけど安心感が上がったのは確か。あ、あと、僕は違いますが、SLユーザーさんだとバッテリー共用できるというのも大きなメリットでしょう。そもそも完成度の高かったQの数少ない問題点を改善した正常アップデート版がQ2の位置づけだその時は思った。

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Leica Q2

 

Qとの比較テストで分かった本質
さて、しばらくヨーロッパで使って気になったのがハイライトの飛び。空が背景に入ったシーンのRAWデータをLightroomでハイライト落としても空の色が戻ってこないことが何度かあった。原因は評価測光。Qではいつも中央部重点測光にしていたため気にならなかったのだが、Q2ではおそらくデフォルトで評価測光になっていたためか、シャドーを基準にした明るめの露出になってしまい、空が飛びがちだった。空のブルーを活かしたいときは露出をマイナス補正にしておくか、中央部重点測光のままにすればOK。

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Leica Q2

 

とはいえ、一応気になったので、日本に戻ってからハイライトの粘りをQと比較実験。

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こちらのややハイキーな露出のRAWデータをLightroomでハイライト-100補正し、真ん中を切り抜いたものが以下。Qは100%クロップ。Q2はQと同じサイズになるように縮小。

まずISO100での比較。ロゴのGのとこで比べたところ、飛び具合はどちらも同じような感じ。

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Leica Q2 @ ISO100

 

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Leica Q @ ISO100

 

次にISO6400での比較。こちらはわずかにQ2の勝ち。加えてノイズなども含めQ2のほうが全般的に良好。やはり暗部性能はQ2の勝ちだ。

 

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Leica Q2 @ISO6400

 

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Leica Q @ ISO6400

 

ところで、このテストで一番驚いたのはISO100での解像感。Q2で撮った画像は4700万画素を2400万画素に縮小して切り抜いたものだ。なので一般的には解像感が高くなるはずだが、Qは全くQ2に負けていない。ここに今回の高画素化の理由が見え隠れする。今回の高画素化は28mm撮影時の解像度アップが目的ではない。こちらの開発者さんのインタビューを見ても分かる通り、高画素化はクロップした後の画素数を上げて実用性を上げるのが目的のようだ。

 

 

クロップズーミング
ということで、いよいよ核心が見えてきた。そう、Q2というカメラは単なるマイナーバージョンアップ機でもなければ、純粋な高画素機でも無いのだ。その本質は軽量コンパクトで高画質なまま28/35/50mmの切り替えができる3焦点カメラを本気で作りましたということなのだ。
50mmでクロップ撮影した時の画素数は4688x3128の1466万画素。十分な画素数だ。
実際、50mmクロップで撮った画像をA3でプリントしてみたが、全く問題なし。さすがSummilux&ローパスレスって感じ。こちらのブログによるとフルサイズ換算で開放時のf値は2.8相当。f1.4開放的なボケは期待できませんが、50mmっぽい立体感は十分に出ます。
ちなみに50mmクロップ時のセンサーサイズは、簡単な図形問題として計算すると、横36*28/50mm,縦24*28/50mmということで20.16mmX13.44mmということになる。このセンサーサイズで1500万画素ぐらいでローパスレスで標準レンズ搭載というと、過去の機種ではSIGMAのFOVEON機の名作DP2 Merillが一番近い。 28mm時はQとして使え、ボタン一つで50mmクロップ時はDP2 Merillに瞬時に切り替わるカメラ。これはかなり素晴らしいんじゃないでしょうか。

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Leica Q2 50mm-clopping


ここ10年カメラ片手にかなりの回数海外を訪問した。いろんな街を撮り歩いて改めて思う僕の理想のカメラシステムは、

  • 28ミリと50ミリのレンズを切り替えられる
  • なるべく小型
  • なるべく高画質

の3つを満たすものだという結論に至っている。
で、この理想に最も近いものは、M型ライカ+Elmarit28mm+Summicron50mmだ。
ただし、どうしてもレンズ交換の手間が生じる。これを解消しようとなるとトリエルマー28/35/50ということになるが、こいつはレンズが長いし暗いし、光学的な焦点切替式なので画質はどうしても落ちるし(そもそも製造中止だし)。これをf1.7通しで単焦点のSummilux画質でコンパクトなまま実現したのがQ2だ。


僕のように28mmを中心に撮影をし、たまに50mmで切り取るような撮り方をする場合Q2は理想的。M10-P+Elmarit28+Summicron50のセットより軽量で、メインとなる28mmではQ2の方が高画質。一方で昔の僕みたいに基本50mmでたまに28mm撮影というケースだと、うーんどうだろうw ボタンひとつでQ2になるDP2 Merill。まあ、唯一無二であることは間違いないですね。

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Leica Q2


さらなる洗練に向けて
ただし、まだ課題はある。

クロップを積極的に使い始めて数日もすると、だいたいの50mm枠線の位置が分かってくる。そうすると、ただただRaw現像ソフトのデフォルトのトリミング位置を設定するためだけにデジタルズームボタンを押すのが面倒になってくる。特に急いでいるときはデジタルズームボタン押さずに撮影し、後から手動トリミング。それで何の問題もない。特に僕の場合は28mmがメインなので、たまに撮る50mmとのショットがどれだったかは大体覚えているんで。

例えばこれなんかそう。デジタルズームボタン押さずに後からトリミングで抜いたもの。

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Leica Q2 50mm-clopping by Lightroom

 

ちなみに元画像はこちら

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Leica Q2 no cropping


うーん、デジタルズームボタンってなんのためにあるのだろうかw

デジタルズームで抜いたRAW画像をLightroomに読み込むと、デフォルトで50mmにトリミングされた状態で表示されるが、データとしては28mm撮影のエリアも残っている。Lightroom上ではただそれだけ。50mmでクロップ撮影しましたというフラグはない。なので、現像時に初期化ボタンを押すと、トリミングが無くなり28mm撮影の画像になってしまい、50mmでクロップ撮影したという情報が失われてしまう。もとに戻すには手動で画面の真ん中あたりで4690X3130に切り抜かないと戻せないというw まあ現像ソフトはLeicaがつくってるわけではないので仕方ないのですが。やはりRAWメインで運用してる場合、撮影時にクロップボタン押す意味が薄いかな。

また、EVF表示にも一言言いたい。Q2は28mm固定レンズカメラなので、M10-pのように28mmフレームを確認するためにフィンダー内で目をぐるりと回す必要はなく、楽に28mm撮影時の全景が見えるよう低めのファインダー倍率になっている。問題はここに50mm枠を表示させると、小さすぎてフレーミングしにくいのだ。M型の伝統を守ったというのは分かるんだけど。
ここはぜひ50mmクロップ時はファインダー倍率上げていただいて、できればM3と同じ0.9倍表示してあげられると、M型ユーザーは感動間違いなしです。
あるいは、28mm枠と50mm枠同時表示もユーザー的にはうれしいぞ。トリミングは覚えておいてあとで手動でやるからいいし・・・と書きながら今ふと思いついた。常時50mmトリミングでRAW撮影しておけば50mmと28mmで常にRAW撮影していることになるじゃん。今度試してみよう。

ともあれ、本格的なフルサイズクロップズームはこのLeica Q2がパイオニアとなる。初めての試みなのでまだまだUXを洗練させる余地大かと。特に上記のファインダー表示の変更とかはファームアップでできることなので期待したいです。また、ユーザー側も使い慣れてくるとどんどん新しい使い方を発見できるかも。例えば、マクロモード撮影時には50mmクロップで撮るといい感じのパースで写るとか最近気づいた。これからの使いこなしが楽しみです。

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Leica Q2


まとめ
さて、長々と書いてしまいましたが、そろそろまとめを。

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Leica Q2

 

Q2のメリット

  • 基本機能の改善(バッテリー強化、静音化、暗部性能向上、サムホイール機能追加、耐候性アップなど)
  • 押すだけでDP2 Merillに切り替えられるボタンの搭載

デメリット

  • ちょっと重い重量とファイルサイズ
  • 2割増の値段

 

正直、基本機能の改善はマイナーバージョンアップくらいの感じなので、重量とファイルサイズ増と相殺。
どうやらまだしばらくはQも併売されるようなので、これから購入するみなさんは、値段2割追加してボタン一つでDP2 Merillに切り替える機能を追加するかどうかが判断基準でしょうか。
あ、あと最後にマイナーイシューを一つ。背面液晶画面での撮影時に撮影情報が画面上下に表示されるのですが、この背景のシェードが濃くてQでも気になっていたのがさらい濃くなって、本来映り込むエリアを黒く覆い隠してしまってフレーミングしづらい。これは早急にファームアップデートでなんとかしてほしいです。

 

 

 

 

SONY α9 レビュー(Leica使いの視点から)

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ソニー α9 レビュー

 

はじめに

軽い気持ちで手に入れたものが思いのほか心地よく、気が付くと手放せない存在になっていたりするのは人生の常ですが、僕にとってのα9はまさにそんな存在。気が付くとMシステム並みの稼働率。このカメラも発表以来時間が経ち、IIの登場が目前に迫っていますが、使い倒してのレビューをまとめてみます。

 

思いつきで導入がどハマり

仕事がらみで撮影を行うこともあり、趣味のカメラとは別に手元には常に一眼レフのシステムを一式キープしていた。しかしLeica中心になってから全く稼働なし。そんな中、突然のα9発表。旧世代の機械技術を一瞬で無力化したデジタル技術に衝撃を覚え、どうせ使わない一眼レフシステムなら面白い方優先ということでNikonシステムを全て売却。追い金なしで発売直後のα9と2470Zを手に入れた。

正直おもちゃとしての役割しか期待していなかった。ところが使うにつれ、その圧倒的な撮影体験に魅了されていくのだった。

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Sony A9, FE24-105mm F4G

 

無音撮影の衝撃

スナップフォトグラファーならみんな、ああ今自分の目がカメラだったら、って思った経験があるはずだ。α9は、自分の目がカメラになるのに最も近い体験を提供してくれる。それはこのカメラの様々な機能が組み合わさって実現されているのだが、その中でも特に重要なのが大型センサー機として世界初の常用可能な無音電子シャッターだ。

確かに指でシャッターは切る。しかし体感的リアクションは何もない。なんつーか、目の前を流れている時間にサクサクとフラグ立ててる感じ。で、あとから見返すとちゃんとフラグたてた瞬間の世界が記憶されてる。それはまさに、撮影が肉体の仕事から脳の仕事に切り替わってしまった感覚だ。

この感覚は、ヨドバシやソニーショップのデモ機で無音連射してもまったく理解できない。ちゃんとストリートにカメラを持って出ないと分からない。特に広角を付けて街歩きするとフラグ立てる感覚が顕著。

こう文章で書いても、おそらくこの感覚はリアルα9ユーザーの、さらに一部のスナップシューティング系の人にしか伝わらないと思う。それはLeica MシステムのUXの素晴らしさを言葉で伝えにくいのによく似ている。

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Sony A9, Summilux 21mm

 

肉体化

このカメラは十分軽い。加えてEマウント機の弱点だったホールディングが大幅に改善されている。もちろんレンズも小型軽量を意識して作られている。そして圧倒的にレスポンスがいい。これらの要素が組み合わさって、このカメラは体との一体感を強く感じる。

カメラを右手にぶら下げて街に立つ。そぞろ歩きをしつつ、気に入った瞬間が訪れる予感がしたらカメラを構える。構えると同時にAFは完了。タイミングを見計らいレリーズボタンを押しその瞬間に無音でフラグ立て。この間ほぼ数秒。視線は次の絵を探して街をさまよう。そのときにはもうカメラは意識から無くなっている。

 ライカの撮影体験に似てはいるけど、大きく異なるのは撮れたという確信が得られないこと。ここがアナログ志向の人にα9が好まれない理由だと思う。ただしこれは一長一短。撮影の味わいという点ではライカUXに負けるが、場との一体化という意味ではα9の方が上だ。ライカ以上にカメラは意識から消えるので場に集中できる。

身体に組み込まれる前の、独立機として存在しているカメラの究極の撮影体験が、このカメラによって明らかになったと思う。そう、こいつは正真正銘の化け物だ。

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Sony A9, FE24-105mm F4G

 

で実際どうよ

飲みながら空シャッター切るのが主な利用シーンになると思いつつ導入したα9だが、気がつくとかなり世界中連れ歩いた。この丸二年使い倒して気づいた点を列挙するとこんな感じ

 

よかった点

  • 画質十分以上。こいつにBatis25を装着すれば、僕的画質王者のLeica Qにも大きな引けを取らない。確かにローパスレスのQの方が細部はカリカリだけど、逆に室内や夕方以降はセンサーの差でα9の勝ち
  • デザイン好き。自分的には一眼レフで最もかっこいいと思うのがCanon New F-1なんだけど、α9はその遺伝子を引き継いだようなお姿。
  • しかも十分小型軽量で世界中連れて歩ける。
  • 本体充電可能は旅カメラとして神。
  • 驚きのアップデートで常に最新。さすがプロ機。
  • 正直、広角メインなんでAF-Sばっか使ってたんだけど、ファームV5.00以降はAF-Cが意図通り動くんで多用。特に拡張フレキシブルスポットは今までAF-Sでやってたことをコサイン収差なしで実現できる。実質的にAF-Sの存在意義が消滅。
  • Batis25という神レンズを使えば、デジタル表示窓でLeicaレンズ以上に正確な被写界深度を使ったマニュアルフォーカスが可能。
  • 高感度強い上に手ブレ補正も付いてるんで夜の撮影最強。
  • Leica Mレンズをセットしても目立った周辺色被り無し。Summilux 21mm用のボディーとしても最適。 

気になる点

  • 確かにグリップが小さく小指あまり発生。自分は軽いレンズでの運用が多いので大丈夫だけど、重いレンズを多用する人とか手の大きな人には不快かも。その場合は延長グリップが必要。
  • 個人的にPASMのモードダイヤルがほんと嫌い。M10見習ってきちんとシャッターダイアルとISOダイアルを搭載して欲しい。
  • 昭和のプロ用機の思想を引きずっているためか、各種物理ダイアルにロックが付いていて操作うざい。
  • Leicaシステムと比べるとあちこち凹凸があるので、収納性は悪い。
  • 小型軽量のパンケーキレンズが少ない。FE35mm F2.8は悪くないけど、28mmにしてさらに薄いやつとか、40mmの薄いのとか、欲しい。
  • 被写界深度使えるのが一部のレンズに限られる。特に小型軽量系で被写界深度表示無いのがもったいない。
  • デザインかっこいいのに、ソニー純正のアクセサリーが安っぽくダサく満足感沸かない。

まあ、気になる点のほとんどはLeicaと比べるとほぼ全ての一眼に言えることなんで、α9固有の欠点はあまりないかも。

 

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Sony A9, Summilux 21mm

 

本当の姿

Leicaと比べてつくづく感じるのがα7/9シリーズのフレキシビリティ。カメラの構え方もフォーカスの仕方も自由自在。なんつーか、一眼としての使い方はもちろん、コンパクトカメラのようにも、ライカのようにも、ハッセルのようにも、ローライのようにも、リンホフのようにも、はたまた動画専用シネカメラのようにも使えてしまう。レンズを変えればLOMOっぽくも大判写真っぽくも撮影できる。変幻自在。

同時に思うのが使う側がこのカメラをどんなカメラとして育ててゆくか意識することが重要だということ。昔ある写真家が「古いカメラは構えがカメラごとに決まってるからライカはライカっぽい写真が、ローライはローライっぽい写真が撮れる。そこがいい」って言ってたことを思い出す。

オーケイ、君が何でもできるのはよく分かった。いざとなれば何にでも変身できるのもよく分かった。でも、僕にとっての本当の君はどういう君なんだい?

このカメラを使う上で最大のポイントはこれを決めることだと思う。そしてそれに従って操作系をカスタマイズし、その操作感を体に染み込ませること。僕は当初ライカ的な使い方でこのカメラを育てようとしていた。しかし今ではマニュアル一眼レフ的な使い方がメインになっている。カメラの形状とファインダーの物理的配置が僕のマニュアル機の記憶を呼び起こすのだ。

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Sony A9, Summilux 21mm

 

単体プロ機復活

さて、ここまでで気づくかもしれないけど、このカメラ最大の売りである秒20コマ連写については、実はあまりメリット感じてない。まあ、面白機能としてたまに使いますが。世間一般では最高速フルサイズ機として知られるα9だが、僕にとっては久々の小型プロ用機ってとこが一番の魅力。そう、モータードライブを付けない単体のNew F-1やF3の後継機は間違いなくこのα9。

その昔、New F-1かF3の単体を片手に世界を巡るのが夢だった。しかしデジタルになった今、肥大化し巨人化したEOS-1dxIIやD5を旅に連れて行こうなんて微塵も思わない。プロ機との旅という夢はフィルム時代の終焉とともに終わったと思ってた。そこにまさかのα9降臨。

メーカーがプライドをかけて作った高品質で信頼性の高いこのプロ用カメラを片手に、これからも世界中を歩こうと思う。

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Sony A9, FE24-105 F4G

Leica Q レビュー

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イカQ Review ブログ

 

はじめに

やけに間が空いてしまいましたが、コンデジに逃げていた僕をライカに引き戻してくれたQのレビューを書きます。購入してすでに2年以上経過しているので長期使用レビューに近いです。

 

本物のフルサイズコンデジ

RX1m2には期待していた。ソニーが本気で作った化物カメラで歴史に残る名機になると確信していた僕は発売直後に飛びついた。が、結果はがっかり。小型化に固執したためか最悪のホールディング、なのに超高精細センサーで手ブレ量産、現実性を放棄した電池容量の小ささ等々、あらゆる要素がUXをないがしろにしていた。ある風の強い日、1/1000で息を止めても手ブレを量産、たった数ショットの風景を撮るために電池を半分消耗してしまった僕は売却を決意。Leica Qにリプレースしたのだった。

RX1m2導入時に当然Qも検討したわけだが、当時はRX1m2の超絶スペックに踊らされていたのと、Qのやや大柄なボディーにこれならM9で十分ということで却下。ところがRX1m2に泣かされた後にQを手にとってみると逆の意味で泣けてきた。

そうだよ、これがカメラだよ。しっかりしたホールディング、その上に手ブレ補正も搭載、シャッター速度と絞りは物理ダイヤルで設定値がひと目で分かる、ソニー機で存在を忘れていた被写界深度表示までちゃん付いてる。やっぱ広角レンズ搭載してて被写界深度表示が無いってほうがおかしいのだ。実にきちんとした本物のフルサイズコンパクトデジカメだ。

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Leica Q

 

でもって画質は驚異的

Qはきちんとしているだけではない。このカメラには狂気がある。それは画質だ。かなり引いた風景撮影でも葉っぱがきちんとツブツブと解像していて衝撃。完全に大判写真の世界。

ローパスレス2400万画素センサーとSummilux 28mmレンズはそれぞれこの組み合わせに最適化してチューニングされている。周辺補正にデジタル補正が入っているらしいがそんなのどうでもよくなるくらい高画質。やっぱレンズ固定式は強い。Leicaで画質比較したが、大好きなElmarit 28mm ASPH + M10では残念ながら完敗。

一眼レフでこれに対抗しようとしたらD850+Nikkor 28mm F1.4Eとかの組み合わせになるだろう。ただしD850+Nikkor 28mm F1.4Eは1650gの巨漢だ。一方のLeica Qはたったの640g。

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Leica Q

 

世界放浪カメラ

Leica QはSummilux 28mmという高性能レンズ込で、ボディーのみのM10より軽い。なのでカメラを持ってゆくか迷うような弾丸出張でも、出発直前にひょいとカバンに放り込む気になる。一眼機のように出っ張りが少なく、平面が揃ったボディーデザインなので荷造り後のカバンにも押し込めてしまう。滞在先のホテルから連れ出すのも全く躊躇しない。

 そんなこんなでQを連れて世界中回ったが、静かなシャッター、歩きながら気楽にスナップできる高速AF、夜景もいける明るい28ミリレンズ、軽量ボディー、旅の雰囲気を邪魔しないデザイン、食事もさっと写せるマクロ機能、移動中の片手撮影も安心な手ブレ防止機能、等々、旅行用カメラとして完璧。ほんとうに一時期はM型不要に思えたくらいだ。

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Leica Q

 

悩ましいMとの使い分け

迷ったらQ。そんな感じで使っていたらいつの間にかMの出番が減ってしまいました。なんせ海外ゆくと28mmを多用するもんで、画質重視で考えるとElmaritでなくQを選んでしまうわけです。結局その後Summaron 28mmを手に入れることで、Mは超小型化したいときor交換レンズも持っていってちゃんと撮る時用、Qはその他カジュアル全般という使い分け。だけど実際のところQ持っていって後悔したことは一度もないですねえ。

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Leica Q

 

エイジング期待

たたずまいもカッコいい。そのままでもカッコいいが、ここは是非ハンドグリップを付けたい。この精悍なお姿はライカビット付きのプロ用M機に通じるカッコよさ。グリップも高品質でホールド性能も激向上でおすすめ。このままひたすら使い込んでシルバーの下地とか見えてきたらど迫力なんじゃないですかね。シンプルでモダンなデザインなのにエイジングが似合う、なんとも不思議なプロダクト。

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大人の360度カメラ

ここまでかっこいいといつでも肩に首にアクセサリー感覚でひっかけていられる。そうすると必然的にいいショットを逃さない。飲み会でもそうやってぶら下げてどんどんいいショット撮って、いい感じで酔ってくると人に貸して撮ってもらう。大きいコンデジなんで誰でも撮れるから。僕の持ってるライカで間違いなく一番自分が写ってるのはQだ。

M型ライカは自分の見ているシーンを切り取る道具だが、Qは自分も含めた場をそのまま保存してくれる大人の360度カメラだ。

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Leica Q

 

おまけとしての要望

あまりにレビューが遅くなり、もうQ2の噂が出ているけど、2年使った上での僕の要望は、

  • 本体でバッテリーチャージさせてほしい
  • (できればでいいけど)純正テレコン出してほしい。画素アップしてトリミングズームをやりやすくするとか噂あるけど、それじゃない
  • (できればでいいけど)動画はせっかくなので4Kで。通常ライカにあまり動画とか求めないけど、Qには欲しい
  • (できればでいいけど)防滴防塵考慮して欲しい
  • 以上について大きくなるならやらなくていいです

 って感じ。切実なのは本体バッテリーチャージのみ。やるなら是非ともUSB-Cで。

 

遅ればせながらQ2のレビュー書きました

Leica M10-P レビュー

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イカM10-P Review ブログ

 

流れるようにリプレース
M10を発売日に購入してから1年半、思えばあちこちにM10と旅をし・・・ていない。なんかM10完成度高すぎで逆に数少ない欠点であるシャッター音の甲高さと赤マークのデカさが気になってしまい、ついついQに手がのびてしまう現象が続いていた。うーん、もう自分はM型ライカ引退なのかなぁ、売却して静かなSLに移行なのかなぁSLダサいけど、などと思い悩んでいるとまさかの静音シャッターM10-P登場。気がつけば極めてスムースにリプレース完了。

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Leica M10-P, Summaron 28mm

 

変更点について
シャッターの静かさはすでにあちこちで語られている通り。実際Qよりも静か。以前のレビューで記した音の体感比較にM10-Pを追加するとこんな感じ。

M9 >> D810 = M3 > M10 >> Q > M10-P

Qも十分静かなんだけどレンズシャッターが少し高音のため響いてしまう。M10-Pの方がマイルドで気にならない音。この音だけで十分買い替え理由になると思います。
この他の機能的な変更点は液晶タッチパネル化と水準器。タッチパネルは不要との意見が多いけど、僕はQでもピント確認の際に多用してるので大変ありがたい。水準器も広角での風景撮影の際によく使うのでこれまたありがたいです。
このように、今回のP化は以前のようなコスメティックな変更でなく、機能進化なので躊躇せずに乗り換え可能。おそろしや。

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Leica M10-P, Summilux 35mm ASPH FLE

 

存在感
以前にも書いたがM10では買った後のおイジりを楽しめなかった。大好きなM3と同じシルバーを買ってしまったのが余計にまずかったのだろう。並べてみるとM10のあの大きな赤マークが気になって仕方なかった。
一方M3にそっくりなM10-Pは見ているだけで酒の肴になる。M3と比べると細部はやはり21世紀。M10-Pの方がシンプルでモダンな感じがする。が、基本デザインはほぼ共通で、これぞ正常進化という感じ。初号機と最新期の組み合わせてテーブルに置くと、まるで博物館の展示物のような存在感だ

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ISOリングについて
ここまでそっくりな二台を並べるとついついコンビで連れ出したくなり、久々にフィルム&デジタルコンビにて出撃。厚みがほぼ一緒なので持ち替えても違和感まったくなし。それでもって、フィルム機で久々のフルマニュアル撮影したんだけど、これが実に気持ちいい。ちょっとしたフレーミングの違いでぴょんぴょん露出が跳ねることがないんで、撮影に集中できる。気がつけばM10-Pでもマニュアル露出で撮影。このときに大活躍したのがISOダイアル。高感度の厳しいM9と違って、M10だとISOオートを多用できるので、正直ISOリングはあまり使えていなかった。ところがフルマニュアル撮影だとISOリング大活躍。とても心地良い。ああ、これがライカ本来のUXだよね。
M型ライカでISOオートを使ってもファインダーにISO値が表示されない。なので露出補正はISOを手動で変えるのではなくリアダイアルで露出補正して行うことになる。こいつは正直使いにくい。露出補正されているかどうかも確認しづらく、気づかないうちに補正入れっぱなしになってしまったり。やっぱ露出補正はISO固定して絞りかシャッターダイアルで行うのが王道。そうなるとこのISOダイアルの存在は神。やっぱライカは余計な機能が無い分、本質的な操作については考え抜かれていると思った。そう思った瞬間、邪道とも思えたあのM10-Dの背中が一瞬見えてしまった。おそろしや。

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Leica M10-P, CONTAX Planar 85mm f1.4

 

デジタルライカの完成形
とりあえず半年弱使ってみて思うのは、M10-Pはデジタルライカの一旦の完成形だということ。M型ライカユーザーの主なフラストレーションはほぼ取り除かれている。残されたボディー側の問題はビゾフレックスの性能くらいか。
センサー技術としてはここからさらにダイナミックレンジも高感度特性も画素数も伸びるだろう。でも、最終成果物をプリントだとした場合、M10-Pが使えない時代遅れ機になることは当分無さそうに思う。高感度さえ目をつぶればM9だって十分現役なわけだし。

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Leica M10-P, Summaron 28mm

 

まとめ
デジタルものでここまで満足&感銘できたのはM9以来。今までは非PからPへのリプレースなんて馬鹿げてると思っていましたが、Pの世界に飛び込んで大正解でした。ただし、Dの背中が見えてしまったことには正直震えていますw さすがに行かないとは思いますが。

Lieca M10 二ヶ月使ってみてのショートレビュー

はじめに

ライカM10を導入して早二ヶ月。前回のレビューでは気づかなかったこととか少しづつ分かってきたのでいくつかブログに書き出してみます。

 

フィルムっぽい描写

なんかこのカメラ、ハイキーといいますか、パステル調といいますか、淡いネガフィルムっぽい感じの絵が綺麗に撮れます。M9だとこってりしたコダクロームみたいな感じになりがちだったのですが、M10だとハイライトが粘るからなのか、なかなかいい雰囲気に仕上がります。最近の自分の好みのトーン。

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Leica M10, Summilux 35mm ASPH FLE

 

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Leica M10, Summicron 50mm

 

薄さ最強伝説

カメラの小ささって、レンズを付けた時の縦横高さのうち最薄の寸法がどれだけ小さいかで決まると思う。結局その大きさがそのカメラを収納するのに必要なスキマになるんで。例えばフルサイズ機最小のはずのソニーのRX1の最薄部は正面から見た時の高さに当たる65.4mm。ところがRX1を実際に使ったことがある人は分かると思うけど、単体ではホールディング最悪で、まともに使おうとしたらグリップやらサムレストやら追加が必須。そうするとかんたんに+1cmくらいになるので、

・RX1の実質的な最薄部は75mmくらい

になる。ちなみに

・M10 + Elmarit 28mm ASPHの最薄部は実測74mm (レンズキャップ込み)

あれ、もしかしてフルサイズ機最薄?

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 手元にないけどMレンズ最薄のSummaron 28mmの薄さは18mm. Elmaritとの差を計算すると、

・M10 + Summaron 28mmは計算上62mm

こいつは間違いなくフルサイズ機最薄。裸のRX1の最薄部より薄い。ちゃんとLeica純正の組み合わせでこれですよ。f5.6だけど。

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 Leica M10, Summilux 35mm ASPH FLE

 

なじむ道具

カメラ好きは新しいカメラを手に入れるとひたすらカメラに気持ちを持っていかれ、それこそ休日は朝から晩までいじりまわしていたくなるのが常。ところがM10は、ものすごく僕好みのカメラなのに、何故かそういう欲があまり起きなかった。どちらかというとカメラいじりまわすよりひたすら外に出て写真が撮りたくなるカメラだ。

これはおそらくM10がMらしいMだからだろう。M3やM9をずっと使ってた僕にとっては、いつものカメラのセンサーだけ新しく入れ替えたものに思えてしまう。5年近く登場を待ってようやく登場した新機種なのに、ずっと使ってきたカメラだと感じてしまうこの不思議。

いい道具は体の一部になるから意識から消える。そして創作活動にのみ集中できる。M10はそういうカメラですね。

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 Leica M10, Summicron 50mm

 

まとめ

M10を完全に駆使しての撮影モードの旅は実はまだ。僕のカメラ観は撮影モードの旅に出て最終的に確立するので、またご報告できればと思います。

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Leica M10, Summicron 50mm

 

 

 

 

 

 

 

Summilux 35mm f1.4 ASPH レビュー

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ズミルックス 35mm f1.4 ASPH reviewブログ

 

プロローグ

僕は長い間、35mmという焦点距離を不得意としてきていた。自分にとっての標準は完全に50mmであり、それと組み合わせる広角は28mmが心地よく、35mmでは近すぎるためだ。そもそも35mmは銀塩時代はコンパクトカメラのレンズの代表格で、なんとも中途半端なイメージが僕にはこびりついていた。

50mmと28mmの組み合わせで撮影をする時は、50mmが中心で、8割以上を50mmで撮っていた。ところが海外の街をふらつきながら写真を撮ることが増えるにつれ、28mmの割合がどんどん増えていった。前にレビューしたElmarit 28mm ASPHがとてもコンパクトで使いやすいこともあいまって、滞在ホテルから他の街に足を伸ばすときには28mm一本でということも増えてきた。そう、明らかに自分の視線が広角よりに変化したのだ。加えて、こちらもすでにレビューしたNokton classic 35mmの描写に魅了され、使いまくっているうちに、35mmへの苦手意識も薄らいできた。

そうして、長い間自分の中で迷っていた、標準Summiluxは35mmと50mmどちらにすべきかという問に結論を出すことができた。

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Leica M9, Summilux 35mm f1.4 FLE

 

ちなみにFLEはフローティングエレメントを指し、このレビューで取り上げる11663を前世代のSummilux 35mm ASPHと区別するためにつけています。

 

圧倒的なコンパクトさと丁寧な作り

焦点距離35mmの大口径レンズは各社から販売されている。しかしみんな大きくて重い。

Canon EF 35mm f1.4L II

  • 長さ 105.5mm
  • 重さ 760g

Nikon Nikkor 35mm f1.4G

  • 長さ 89.5mm
  • 重さ 600g

完全に500mlのペットボトルよりも重い。ところがSummiluxは、

Leica Summilux 35mm ASPH FLE

  • 長さ 46mm
  • 重さ 320g

ということで、長さも重さも半分。AFモーターが組み込まれていることを考えても、圧倒的なコンパクトさだ。これは、ミラーボックスの無いLeica Mシステムでは50mmレンズと同様な明るくてコンパクトな35mmレンズを作りやすいという技術的背景に加え、ライカ社自体の、Mシステムはなるべくコンパクトにしたいという思想の表れだ。

作りも丁寧。今となっては貴重な現行マニュアルフォーカスレンズ。フォーカスリングのしっとりとした回し心地は最高。レンズの被写界深度表示は、AFレンズにも申し訳程度に付いてはいるが全く使い物にならない。マニュアルフォーカスのSummiluxはしっかり一絞り単位の被写界深度の目盛りが真っ白な塗料でくっきり描かれている。見やすい!もちろん、長年使ってもハゲにくいように金属面に彫りを入れてそこに塗料を流し込んでいる。

このあたりからモノとしての愛着が一気に増してきますね。

フードは金属製。傷がついても味になる。もちろん、内側は無反射塗装。おまけにファインダーの視野を妨げないようにくり抜きがあるという凝りよう。

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Leica M9, Summilux 35mm f1.4 FLE

 

圧巻の描写性能

さて、写り。もう、圧倒的にSummilux ASPHの35mmの写りです。全く説明になってませんね。言葉で言えば、ピントあったところはウルトラシャープで、ピント外れたところは透明にとろける。結果として対象物が浮き上がる3D描写。

実際に見てみましょう。比較のため、対照的な写りをするNokton classicと並べて見てみましょう。

 

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Leica M9, Nokton classic 35mm f.14 MC, at f1.4

 

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Leica M9, Summilux 35mm f1.4 FLE, at f1.4

 

二枚ともf1.4にて撮影。このサイズだと違いがやや分かりにくいです。なので、拡大してみましょう。

 

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Nokton classic 35mm f.14 MC, at f1.4

 

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Summilux 35mm f1.4 FLE, at f1.4

 

はい、完全に別物ですね。Noktonは手ブレでもピンぼけでもありません。開放ではこういう写りになります。まるで霧がかかったような幻想的な写り。一方でSummiluxは切れそうなほどリアルでシャープ。Noktonは遠い記憶の中のシーンのようなセンチメンタルな雰囲気の絵になるが、一方でSummiluxはもっとなまめかしく濃厚な描写になる。

これは一種の表現方法の違いであり、一概にどちらが価値が高いとか低いとかという話ではない。だけど実際にはこのレンズ、実売価格で10倍以上の差がある。これは、Summiluxが少数生産のドイツ製であることを差し引いても、カメラ用レンズというものが基本的にコストベースの価格付けであるからで、35mm f1.4で合焦面でここまでのシャープさを出そうとすると、レトロな写りのレンズの何倍ものコストがどうしてもかかってしまうのだろう。

次はBokehの部分で比較。

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Nokton classic 35mm f.14 MC, at f1.4

 

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Summilux 35mm f1.4 FLE, at f1.4

 

Noktonは、少しかすれるような、やや落ち着いたぼけ。一方でSummiluxは油に絵の具が溶けてゆくような、とろりとしてなまめかしいぼけ。背景によっては少し二線ボケになる可能性はあるが、絵としてはSummiluxの方が華やか。

このぼけの違いも画面全体を通してNoktonは感傷的に、Summiliuxは官能的に写る要因だ。

 

35mm一本くんの旅

Summilux 35mm ASPH FLEを手に入れたら、まさか予期していなかったが、海外旅行に35mm一本で旅立つようになった。何と言っても夜に強い!広角でf1.4ですから。

重さもSummicron 50mmとは100gも違わない。総重量はElmarit28+Summicron50の二本持ちよりも軽い。壮大なヨーロッパの建築物が画面に入り切らないこともあるが、そんなときは縦位置を使ったりしながら構図を工夫。なんとか絵にする勉強になります。

そして楽しいのは絞りのコントロール。開けると官能的に背景がボケ、閉じると広角らしくパンフォーカス。35mmは広角レンズではありますが、絞りで表情ががらりと変わります。まるでレンズ交換しているみたい。M10でライブビューで試すと、この表情の変化がよくわかって面白い。絞りリングが完全にBokeh調整リングになります。

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Leica M10, Summilux 35mm f1.4 FLE, at f1.4

 

ご覧のように、開放ではやや周辺光量落ちがあり、それが逆に中心部のスポットライト効果になります。

いやー、面白いなー。50mmをメインに撮っていた時は、いつも50mmの絵だった。ところがSummilux 35mmだと、50mmレンズっぽくも、28mm以上の広角っぽくも撮れる。この表情の豊かさこそが、僕がSummilux35を好きな理由だ。

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Leica M10, Summilux 35mm f1.4 FLE

 

まとめ

以前仲間たちと海外に行った時、50mm一本でみんなの写真を撮りまくった。おかげさまで最高な表情がたくさん撮れたんだけど、飲み会だけうまく撮れなかった。なにせ自分も一緒に楽しく飲んでるんで、みんなが近すぎて50mmだと辛い。50mmは観察者としての標準レンズだ、でも35mmは、自分も場の仲間として溶け込むことのできる標準レンズだ。例えばそういうことを、このレンズは僕に教えてくれた。他にもいろいろなことをこのレンズは僕に教えてくれる。あらためてこのレンズと向き合うと、このレンズの持つポテンシャルの大きさと魅力の深さに感銘を受ける。それと同時に全くもってこのレンズのスケールに自分がついて行けていないことも思い知る。このレンズとじっくり付き合いながら、隠れた魅力を少しずつ引き出して行きたいと思います。

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Leica M9, Summilux 35mm f1.4 FLE, at f1.4

 

Nokton classic 35mm f1.4 レビュー

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ノクトン クラシック 35mm f1.4 MC reviewブログ

 

プロローグ

Leica持ってまず考えたのは、常用レンズ何にしようかということ。普段つけっぱなし、かばんに放り込みっぱなしで、いざという時に取り出して使うレンズ。Noctilux常用なんて強者もいるけど、僕はやはり小型レンズがいい。M3の場合必然的にSummicron 50mmになるんだけど、M9だと広角側の選択肢が広い。結論として小さくて明るいNokton classic 35mm f1.4 MC を購入。ところが旅先でSummicron 50mmやSummilux 21mmと開放時の描写があまりに違い、また、6bitコードが無いためレンズ交換のたびに手動レンズ設定するのが面倒になり使わなくなってしまった。それからしばらく経って、Nokton classic 35mmで撮った写真をプリントアウトしたら、あまりの雰囲気の良さにうなってしまった。Nokton classic 35mmが常用に復帰した瞬間だった。

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Leica M9, Nokton classic 35mm f1.4 MC, at f1.4

 

センチメンタルな描写

Summilux 21mmやSummicron 50mmの合焦点でのピントの切れ味にはまってしまった僕は、開放で、絞って、とにかくこの2本で写真を撮りまくった。写真はどれもコントラスト高くビシッとした爽快感のある仕上がりだったんだけど、そんな写真ばかりに見慣れてしまっていたある時、Nokton classic 35mmで撮った夕暮れの街をプリントアウトした。出てきた写真は、夏の終わりの夕暮れ時に感じる喪失感が画面から匂い立っていて、軽く胸が締め付けられる感じがした。同じような写真をSummiluxで撮ると、もうちょっとエロく写るというか、なまめかしい感じがするんだけど、Nokton classicで撮ると、遠い記憶の中の情景を見ているような、そんなセンチメンタルな感じに写る。こういう写りの味みたいなものはとても感覚的だし、個人的なものであるんだけど、クリエイティブな道具を選ぶ時にはやはり重視してしまう。

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Leica M9, Nokton classic 35mm f1.4 MC, at f1.4

 

世の中では滲みレンズとして球面Summilux 35mmが人気だ。Cosina製のこのレンズは球面Summiluxへのオマージュであるらしい。僕は持っていないので正確な比較は出来てないが、ネット上作例や情報を見ると、このレンズより球面Summiluxの方が滲みやフレアの出方は激しいようだ。それを新技術で味を残しつつ暴れ要素をコントロール。おまけに球面Summiluxは中古でしか手に入らず、個体差も激しい。それを新品の品質でどうぞというコンセプト。

ちなみに僕の場合、Noktonの幽かな、ごく幽かな球面収差が胸にささるので、多分球面Summiluxには行かないと思う。多分、多分…。

Nokton classic 35mmにはマルチコーティングのMCと単層コーティングのSCがある。僕のはMCの方だ。こちらの方が色やフレアなどのクラシカルテイストは薄いようだけど、目的は普段使いなんで、使いやすいMCを選んだ。

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Leica M9, Nokton classic 35mm f1.4 MC, at f1.4

 

驚きの描写変化

このレンズ、絞ると意外と普通にシャープになります。その変化が劇的。こちらは開放で撮った全景ですが、

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Leica M9, Nokton classic 35mm f1.4 MC, at f1.4

 

真ん中あたりのピンが来ているところをf1.4とf8で100%で切り抜くと、

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100% crop at f1.4

 

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100% crop at f8

 

ごらんの通り、全く別物の描写。f1.4の方は決して手ぶれしているわけではありません。こういう写りなんです。でもこれ、あくまで等倍で見たときの様子。プリントするときこれはもっと縮小されて印刷されるんで、一件普通にシャープ。でもごくごく幽か球面収差が残っていて、それが感傷的な描写になるのです。

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Leica M9, Nokton classic 35mm f1.4 MC, at f1.4

 

外観と操作性

このレンズ、35mm f1.4というスペックにもかかわらず、全長28.5mmで重量200gときわめてコンパクト。現行ライカ最小レンズのElmarit 28mmより全長はやや短いくらいで、常用にまったく支障なし。デザインは球面Summiluxへのオマージュと申しましょうか、絞りリングの形状まで一緒。若干気に入らないのが、コシナフォクトレンダーによくあるんだけど、レンズ先端にフード取り付け用の金属かぎ爪が付いていること。しかも無塗装の銀色。普段の持ち歩きはフードなしなので、この銀色リングが目立っていまいち。せめて塗装して欲しかった。あと、レンズキャップに厚みがあるのも残念。折角薄いレンズなのに、レンズキャプの厚みで収納時寸法を5mm以上延ばしてしまいもったいない。別途薄いキャップを探してみます。

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Leica M9, Nokton classic 35mm f1.4 MC

 

万能です

このレンズは、夕暮れ時の街をそぞろ歩きしながらさっと情景を切り取るのに最高。でも、光が溢れまくる日中でも、きちんと絞ればびしっと描写してくれます。ほんと、どちらでもOK。描写の面から言っても、やはり万能ですね、このレンズは。

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Leica M9, Nokton classic 35mm f1.4 MC

 

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Leica M9, Nokton classic 35mm f1.4 MC

 

まとめ

いやあ、プリントすればするほどこのレンズには惹かれますね。どうしてもライカブランドにこだわりがあるんなら、程度のいい球面Summiluxを探さないといけないんだけど、そういう手間無しで、しかも圧倒的低価格で、もっと現代的性能で品質保証もある新品を手に入れられるというのはとても幸せです。コシナさんありがとう。素直に感謝します。

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Leica M9, Nokton classic 35mm f1.4 MC

 

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Leica M9, Nokton classic 35mm f1.4 MC