Leica M10 アダプター遊びレビュー Canon New FD 85mm f1.2L編
ライカ M10 reviewブログ アダプター遊び Canon New FD 85mm f1.2L編
Introduction
さて、M10のメインレビューにも書いたとおり、実はM10の機能で一番のサプライズはライブビューでして、さっそく手元のお宝レンズを活用しようとマウントアダプター導入。まずはCanonのマニュアルフォーカス時代の至宝 New FD 85mm f1.2Lを装着し軽く撮り歩きました。いやあ、いい意味でサプライズがありました。
85mm f1.2L
僕のレンズ観を一変させたレンズは間違いなくEF 85mm f1.2Lだ。eosデジタルを利用していたころは本当にこのレンズに酔いしれた。
EF 85mm f1.2Lは合焦点はまるでSummilux ASPHのようにシャープだ。しかしボケはまるでNoctilux f1.0のように暴れる。この対象性が日常をドラマティックな風景に変換する。まさに自分にとってはマジカルなレンズであり、思い入れも強い。
そしてこのEF85mm f1.2Lの先祖にあたるのがNew FD 85mm f1.2Lだ。以前、たまたま美品が販売されているのを発見し、これは崩壊するFDマウント市場から救い出さなくてはと即購入。しかし、やはり案の定、フィルム撮影から離れてしまい置物化。遅ればせながら初のフルサイズミラーレス機のM10で早速デジタルデビューさせてみた。
驚きのやわらか描写
あのEF 85/1.2Lの祖先であり、切削非球面レンズ(なんという甘美な響き)を組み込んだ伝説のNew FD 85mm f1.2Lだ。デジタルではどんな表情をみせてくれるかと楽しみにしていたのだが、いきなり予想をくつがえされた。
とりあえず、適当に撮った一枚。
Leica M10, New FD 85mm f1.2L, at f1.2
あれ、柔らかい。
でもって真ん中あたりの合焦点を100%クロップ。
そう、開放では軽くフワッと甘めの描写なのだ。以前フィルムで撮ったときにはここまでの柔らかさは感じなかったんだけど、デジタルだとよく分かる。やはりこのレンズはオールドレンズのたぐいだ。ただし、どちらかというと自分の好きなタイプの描写。そう、これ、Noctilux f1.0的な描写なのだ。
きっと絞ったらいきなり解像度が上がるんだろうなと思いつつ、ひたすら開放で撮る。ベース感度ISO100のM10だからなんとか日中でもイケる、が、ちょっとハイキー気味。でもそれがこのレンズの雰囲気と見事にマッチし、EFとは別のタッチで日常がドラマ化される。
Leica M10, New FD 85mm f1.2L, at f1.2
Leica M10, New FD 85mm f1.2L, at f1.2
ハンドリングも悪くない
レンズは単体で680g。アダプター付けて700g台。たぶんNoctilux f0.95とおなじくらいの重さだ。あちこちのレビューサイトにあるように、Noctilux f0.95はMのボディーと重量バランスが取れていて意外と悪くない。このレンズもまさに同じ感じ。ただし、やはり絶対重量はあるので、細めのいつものレザーストラップで直接首にかけるとちょっと食い込む。長時間はきついかな。今回は厚着だったので肩がけにしたら気にならなかった。
まちをふらつきながら、目に入ったものをひたすら開放で写してゆく。久々の85mmなので視点が新鮮。楽しい。
Leica M10, New FD 85mm f1.2L, at f1.2
スペックは正直
大口径中望遠ということなら、他にもCONTAX Plannar 85mm f1.4とSummilux 75mm f1.4を持っている。これらはまた別途レビューするつもりだけど、やはりf1.2というほんのちょっと明るいスペックだと見える世界が全く違いますね。被写界深度浅すぎ。拡大表示のできるライブビューがあって初めて積極利用したくなりますね。
Leica M10, New FD 85mm f1.2L, at f1.2
Leica M10, New FD 85mm f1.2L, at f1.2
Leica M10, New FD 85mm f1.2L, at f1.2
まとめ
実はそろそろP.Angeniuxあたりに手を出そうかとも思ってたんですが、手元のこのレンズでも十分面白い描写をしますね。いやー、驚き。フィルムではここまでの柔らかい感じだとは分かりませんでした。最後に何枚かフィルムの作例貼ります。こう見ると確かに柔らかさがありますね。この柔らかさはフィルムのせいかと思ってましたが、レンズのキャラだったんですね。面白い発見でした。M10アダプター遊び、やばいですね。
Canon New F-1, New FD 85mm f1.2L, at f1.2, RVP100
Canon New F-1, New FD 85mm f1.2L, at f1.2, RVP100
Canon New F-1, New FD 85mm f1.2L, at f1.2, RDP3
Leica M10 レビュー
ライカ M10 reviewブログ
プロローグ
M3,M9と続けて購入しマニアックなM用レンズにも次々手を出した僕だが、過去記事の通り、長い間レビューから遠ざかっていた。その間ひたすらRX100シリーズを使い倒していた。M240をスキップしたからだ。
M240にはとても期待していた。しかし実物を触ったときのコレジャナイ感が凄まじかった。厚くて重いので手にしっくりこない。レスポンスも遅い。色味もあっさり。どうしたものかと悩んでいるうちに値段も上がり、完全に購入タイミングを逃してしまった。RX100シリーズがあまりに手軽な上、日中の画質はA3くらいまでのプリントには十分。満足した僕は一時はMレンズは大幅整理してしまおうかと考えた時期もあった。しかし昨年、M9で撮った写真を見返していて、1inchセンサーで自分の目が堕落してしまったことを自覚。再度フルサイズの常用を検討。
そして遅ればせながらLeica Q(別途レビュー書きます)を導入した。
このカメラは、僕にとって久々の革命だった。改めてLeica社(及び裏で手伝ったと噂のパナソニック社)に敬意を払うとともに、Mレンズのキープを確定。新型ボディーとしてType262を本格検討始めていた矢先、ついにM10の噂が流れてきた。
Leica M10, Summicron 50mm
待ちに待ってた正常進化
僕は今でもM9が好きだし、現役カメラとして時々使っている。なにせフィルムのM3からライカに入ってるんでM9でも基本的には文句無し。しかしだ、M9はやはり古い。M240後継機には、具体的には以下の点を大いに期待していた。
1. 高感度性能
ISO1600までならフルサイズのM9の方が強い。しかし、M9は3200以上には設定すらできない。RX100は塗り絵画質だが6400までは撮れる。
2. ライブビュー
撮影アングルの自由度が増すので、もはや不可欠。
3. 液晶の質
M9の液晶は完全に時代遅れの代物。
4. 大きなシャッター音
Mシリーズのコンセプトに反する、M9のパコッと派手なシャッター音はなんとかしてほしい。
5. 軽量化/スリム化
上記1から4は一応M240で実現されていた、が、結局重くて厚くて、僕はM240をスキップしてしまった。
6. wifiスマフォ接続
これで自分の旅先での自由度が飛躍的に高まった。ノートPCなしでも現像処理してSNSでシェア可能は後戻り不可の革命。
M10はこのリストをすべて実現してくれた。若干不満に残る部分もあるが、間違いなく僕の望む方向に進化してくれた。そう、待ちに待っていた正常進化だ。
Leica M10, Apoqualia-g 28mm f2.0
高感度性能について
これについては今更僕が実験せずとも、あちこちで結果が出ているのでそちらを参照されたい。だいたい、M240比較で2段、SL比較で0.5段の改善ということらしい 。
http://www.slack.co.uk/leica-m10.html
実際、暗いところでも普通に映る。普通の現代のフルサイズデジカメだ。普通なんだけど、Leicaで普通というのは素晴らしい。過去のM9のレビューにも書いたように、電子的な性能が普通以下でも使いたい理由がたくさんある。それが普通になった瞬間に、Leicaは奇跡のカメラになる。
Leica M10, Summicron 50mm
ライブビュー
実は今回M10で一番感動したのがこれだ。なにせM240スキップしてるんで、M型でのライブビューは初めて。あのNoctilux f1.0のピントの山がちゃんとつかめる!それだけで素晴らしい。で、みなさん、気になるのはレスポンスでしょう。
以下、ファーム1.3.4.0にて。
- メインスイッチONの状態からLVボタン押してLV画面が表示されるのは瞬時
- LV画像のカクカクは全くなし
- シャッター切ってブラックアウトする時間もゆっくり瞬きするくらい。Sモードで続けてシャッター切って、体感で2コマ/secくらいの連射が可能。
- LVモードのままメインスイッチOFFにして、またメインスイッチONにしてディスプレイ表示が復帰するまでの時間がやや遅い。ストップウォッチで複数回計測しましたが、ざっくり1.5秒弱。
ちなみにRX100M3でスイッチオンしてからディスプレイ表示復帰までの時間がだいたい1.2秒くらい。RX100はレンズが伸びるという儀式も行った上でのこの時間。わずかですがM10が遅いですね。ファームアップでもう少し高速になることを期待。
Leica M10, Summicron 50mm
液晶の質
はい、M9との比較なんで、天国です。ちなみにQも天国でした。QとM10と比べると、どうでしょう、同じくらいの天国感?すいません、なにせM9から這い上がってきたんで、全部良く見えます。
Leica M10, Summilux 35mm ASPH FLE
シャッター音
M240触って唯一感動したのがシャッター音。とても静かでした。M10のシャッター音はそれと比べるとシャキシャキしててやや高音が響きます。しかし、M9から比べるとようやくライカらしいおとなしい音になりました。手元にあるカメラで1/60secでの音の大きさを体感比較すると、
M9 >> D810 = M3 > M10 >> Q
という感じ。M3よりM10の方が音が小さいというのは意外でした。M3は静かなのですが少し音が響きます。一方で、M10はややこもった感じ。Qはレンズシャッターなので別次元。ちなみにD810は一眼レフなので絶対音が大きいはずですが、非常にソフトに消音されていています。D810とM3はボリューム的には同じくらいなのですが、M3の方がやや高音なので若干目立つかも。ああ、M3の静音シャッター神話が!
Leica M10, Summicron 50mm
軽量化/スリム化
M3がとても手になじんでいたので、デジタルライカのスリム化は本当に嬉しい。今回は珍しく発表初日に実機も見ずに予約を入れたわけですが、このスリム化は背中を押す効果が高かった!で、その後実際に手にとって見ると、、、うん、確かにM9より薄い、M240は論外、、、だけど、M3ほどのすっきり感は無いなあ。
実際測ってみたらM3のトップカバーの厚みは約31mm強、M10は約33mmとその差2ミリ弱。だいたい6%くらいの差ですね。ちなみにM9は36mm。M10はM3とM9の真ん中よりちょいM3に近いくらいの薄さ。いやあ、よくやりました。だって構造的に難しいだろうって諦めてたんだもん。スリム化の現実的な方法はマウントを出っ張らせることだけど、Leicaは意匠的にそれはしないだろうと思ってた、だけど、今回、ほとんど気づかないくらいマウントを前に出した。大きなデザイン変更ないのに違和感がない絶妙なレベルでの前出し。M10のデザインって、ものすごい緻密バランスの元に成り立っていると思います。
背中合わせの初号機(M3)と最新機(M10)
お背中の雰囲気もよく似てる
重さ。重いです。M240よりはちょっと軽いですが、やはり重いです。ただ、なんというか、意外と違和感が無い。M240持ったときはデブったボディーとあいまって、ある種嫌悪感を感じる重さでした。この違いはなんだろうと考えてたんだけど、実はM10はM3持ったときの体感に近いんです。M3は重いカメラです。薄いんで軽そうにみえるんだけど、手に取るとずっしりくる。でも、手のひらへの収まりいいんで、長時間持ってもさほど疲れない。M10もそんな感じ。デジタルライカとしては薄いんだけど実は重くって、でも薄くて持ちやすいので疲れない。心地いい重さ。ちなみに重さも比較を書いておくと、
M240(680g) > M10(660g) >> M3(595g) > M9(585g)
デジタルはみんなバッテリー込。おかしいなあ、M10 >> M3なのに体感似てるんだよなあ。やっぱ薄さは見た目にもホールディングにも効いてるんですかね。
Leica M10, Apoqualia-g 28mm f2.0
wifiスマフォ接続
もうこれないと旅先に連れてゆきたくなくなるほど、今や僕にとって必須の機能。スマフォ画面はデジカメの液晶の倍以上の大きさで画質も最高だし、カフェでちょいひと休みしつつの作品チェック、SNSへのシェアは楽しみの一つ。ようやくMでこれができるようになりました。できるだけで天国。
ただし、もちろんお約束どおり、初期段階の現時点ではアプリもカメラ側も使いにくい。しかもAndroid版出てないし。改善&リリース早くやっていただけると幸いです。
Leica M10, Summicron 50mm
でもって全体的にどうなのよ
細かく機能ごとにインプレ述べてきましたが、じゃあ、全体的にどう感じるのか。はい、普通にMです。いつものMです。それが暗いところでも現代のデジカメのように使える。あと、Noctiで厳密なピント合わせができる。そういうちょい特殊な状況で対応できるようになったのが進化なのですが、それ以外のほとんどを占める普通のシーンでの普通の撮影ではM3やM9と一緒です。
これはすごいことです。
要は、技術の進化を超えて伝えられる普遍的なユーザー体験がMシステムでは確立してるんです。それが何なのかは過去に書いたM3のレビューで表現したつもりです。
M10は間違いなくこれからのMの歴史を引き受ける、正統派の名機です。
Leica M10, Summicron 50mm
ISOダイアル
そうそう、ISOダイアルについて書いておきましょう。デジタル移行してから、ずっと僕にとっての夢は、ISOダイアル、シャッターダイアル、絞りリングの3つを備えたカメラが登場することだった。で、初めてのそのカメラはNikonから出た。Dfだ。これが全く使い物にならい。だっていちいちロック解除しないとダイアル回せないんだもん。で、ようやく自由に回せるISOダイアルを持って登場したのがM10だ。回して使うときは上に引っ張り上げておかないといけなくて、その引き上げがやりにくい。が、上げとけばそのまま好きに回せる。さすがLeicaさん、写真撮影のUXを理解していらっしゃる。ところがですよ、このISOダイアルほとんど使ってない。だって高感度性能が優秀すぎるんだもん。M9のときは勝手にISO上げられるのが嫌すぎてISOは常にマニュアル設定。ええ、フィルムと同じ感じです。で、フィルム交換くらいのインターバルで、ISO見直す。だから、すごく期待してたんですけどねぇ。M10は多少ISO上がっても画質破綻しませんからねえ。このダイアルについてはまだ使いこなせてないと思うんで、もうすこし試してみます。
Leica M10, Summicron 50mm
その他気になったことをまとめておきます
- 純正ストラップが革製に!しかも僕の好きな長さ調節なしの一枚タイプ。こいつは素晴らしいです。ただしちょっと長い。
- 光学ファインダーでISOが確認できない。ISO-autoでこれはちょっと困る。
- バッテリー持ちは思ったより全然いい。ライブビューをたまに使った撮影しても、M9より持つかも。ただ、wifi使うと劇的に電池食う。できればファームアップデートでチューニングしてほしい。
- ファインダー倍率/視野は数値上変わってるが体感の差はあまりない
- 親指ひっかける出っ張りがM240より出っ張って引っ掛けやすくなった。ホールディングしっくり来るのに効いている。さらにサムレスト追加は不要では?
- 前面の右手がかかるあたりにあるボタンは、いろいろ機能割当できるようにしてほしい。
Leica M10, Summicron 50mm
まとめ
とりあえず正常進化で一安心。もう少し使い込んで報告したいと思います。
Leica M10, Summicron 50mm
Leica M10, Summicron 50mm
Summilux 21mm f1.4 ASPH レビュー
ズミルックス 21mm reviewブログ
プロローグ
このレンズはSummicron 50mmの次に購入した二本目のライカレンズだ。50mmのしかもSummicronの次にいきなり21mmのSummiluxだなんて、明らかに当時の僕は倒錯していた。しかし、当時はまだM9に手を出す前で、どうしても明るい広角が必要だった。しかも価格は今の2/3ほど。世界初の21mm f1.4をどうしても試してみたくて、デジタルライカを後回しにして清水の舞台から沼めがけてダイブしたのだった。
Leica M9, Summilux 21mm, at f1.4
さっそく写りを
このレンズは、世界初の21mm f1.4のレンズというよりも、21mmのSummilux ASPHだと捉えたほうが分かりやすい。明るくカラフルでメリハリがあって官能的にBokehる、あの35mmや50mmのSummilux ASPHがそのまま21mmの画角になった写りをする。
Leica M9, Summilux 21mm, at f1.4
ごらんの通り、Summilux ASPHを使っている方が見れば納得すると思います。
・カラフルで濃厚な発色
・ピントが来ているところが極めてシャープ
・そこからトロリと油に溶けるようななめらかなボケ
言葉にするとこんな感じでしょうか。
This is Super Fast and Super Wide
しかし、やはり35mmや50mmの標準系と比べると超広角のSummiluxには特徴があります。それがこれ。
Leica M9, Summilux 21mm, at f1.4
これ、この小さなサイズで見ると、全面にピントの合ったパンフォーカスの写真に見えます。ところが真ん中の部分を100% cropで拡大すると、
100% crop
こんな具合に、フォーカス部はくっきり、背景の海は透明でなめらかに溶けているという、まさにSummiluxの描写。超広角で背景を広く取り込み、しかも大きく崩さずなめらかにボカし、ピントが合った主題のみをくっきりと浮かび上がらせる。これを大きくプリントすると、もうそのプリントはまさに現実。写した時そのまんまの景色が目の前に蘇ります。プリントに吸い込まれてもう一度同じ場面に立ち会っているような錯覚。
そう、こいつは完全に大判カメラで撮影した情景なのです。
これが超大口径超広角レンズの世界なのです。しかもそれが、4x5のカメラとは比べ物にならないくらいコンパクトなところが衝撃的なのです。
Leica M9, Summilux 21mm, at f1.4
ハンドリングしやすい
レンズ自体はスペックを考えると十分に小型で580gの重量はNoctilux0.95と比べると2割ほど軽い。M9と組み合わせても1165gで、普通のデジ一の常用重量とたいして変わらない。しかもM9との重量バランスが最高。変なトルクが手首にかからないので持ち歩いてもあまり疲れない。
Leica M9, Summilux 21mm, at f1.4
バックにつっこんだり、手からぶら下げたりしながら、世界中連れ回りました。それにしても、21mmの被写界深度は深い。f5.6にすると、1mちょっとから無限遠までパンフォーカス状態。ピント気にせず、時にはノーファインダーでぱちぱち撮れる。M9のファインダーは28mmまでだけど、枠いっぱい使って21mmちょいって感じ。邪魔に成る外付けファインダーは使わない。そう、こいつは絞った瞬間に一流のスナップシューターに早変わりするのだ。
画面の端に余計なモノが写り込んでも気にしない。あとでRAW現像するときにトリミングすればOK。歴代のスナップシューターの先生方と同じ考え方。ネガ(=RAWファイル)は中間生成物であり、最終作品はプリントなのです。
Leica M9, Summilux 21mm, at f1.4
Leica M9, Summilux 21mm
Leica M9, Summilux 21mm
Leica M9, Summilux 21mm
Leica M9, Summilux 21mm
まとめ
確かにこのレンズは高価だ。しかも僕が手に入れた時から1.5倍くらいに値上がりしている。しかし、今、大判写真を撮ろうとしたら一体一枚につきいくらかかるのだろうか。大判カメラに機動性は無いが、こいつは片手でもって歩ける。しかも絞ればノーファインダーでも扱えるスナップシューターに早変わり。こんなレンズはSummilux 21mしか存在しない。
このレンズは特殊仕上げのレア物限定品ではない。他の量産ライカMレンズと同じく写真を撮る人のための完全なる実用品だ。それを伝えたくてこのレビューを書きました。
あ、最後に一つ。こんな具合に画面に太陽が入るとフレアーっぽくなります。が、うまく表現できると雰囲気出ます。基本的には優等生で、大きく破綻することはないです。
Leica M9, Summilux 21mm, at f1.4
Leica M9 長期使用レビュー
ライカ M9 長期使用reviewブログ
ライカM9を導入して2年半経過しました。Photokinaでついに新世代のLeica Mが発表され今更という感じもしますが、あえて今だからこそこの2年半を振り返り、長くたくさん使って感じたM9のインプレッションをまとめてみたいと思います。新しいMをどうするか自分で考える材料にもするためにも...。
Leica M9, Summicron 50mm
この2年半、M9以外にもいろいろなカメラを使ったけど、結局振り返ってみると僕のメイン機材はずっとM9だった。X100やRX100などのひと回り小型なハイテク機を導入した時はM9の出番が減るかと思ったけど、結局はすぐに飽きてM9に戻ってしまう。理由はだいたい以下の通り。
1.素晴らしいレンズ達
2.画質の良さ
3.使い易さ
4.いじる楽しさ
5.がんばれる大きさ
6.Heritage
それぞれについて書いてみる。
Leica M9, Noctilux f1.0
1.素晴らしいレンズ達
今はミラーレスを含め、レンズ交換を楽しめるカメラが乱立している楽しい時代だけど、間違いなくライカMシステムが最も個性に富んだシステムだろう。スタンダードなSummicronの35mm, 50mmでさえ伝説的な描写で中毒患者多数。上級のSummiluxは35mmも50mmもそれぞれ世界最高性能の誉れが高い。さらには圧倒的に濃厚で個性的なNoctilux。いわゆる標準レンズを取り上げただけでも語り出せば止まらない。実際に使って撮ってみると本当にどれもが個性的。決まったショットはそれこそ写真に吸い込まれてしまいそうな描写だ。一度撮影に出ると、ひとつは描写に見とれてしまうショットがある。これを経験してしまうとどんなに使いやすくて暗い所での性能が高くても、結局はMシステムに戻ってきてしまう。普通の良さじゃ物足りないのだ。そしてこのレンズの個性を活かすにはセンサーの解像度が重要だ。
Leica M9, Summlux 21mm ASPH
2.画質の良さ
M9の解像度は35mmサイズでは世界最高クラスを維持してきた。D800Eという化け物が出てきててしまい、No1タイというポジションからは一歩後退だけど、それでも依然ローパスレスフルサイズセンサーの解像感はすばらしい。高感度性能はCMOSセンサーにはかなわないけど、それでも銀塩に比べたらずっといい。単焦点の明るいレンズを使って光をたっぷり拾うので、実際の撮影ではISO160のベース感度での撮影が多い。この、カメラにとって最高性能を発揮できる条件で他の高級コンデジと比べてしまうと、やはりM9は一歩抜きん出ている。いいショットを見るたびにがんばってM9持って来て良かったと思うのだ。そしていいショットを外さないためにも、大切なのは操作性だ。
Leica M9, Summicron 50mm
3.使い易さ
いろいろデジカメ使ってみた結論だけど、結局自分にとっては絞りリング、シャッターダイアル、フォーカスリングの3つを回してカメラをコントロールするのが一番使い易い。結局数値入力は専用物理ダイアルにかなうものがない。フォーカシングについてはいろいろなやり方があるけど、普段広角を使うようになってから目測で被写界深度使ったフォーカスを多用するようになった。これが一番気楽で速射性にも優れている。AFが迷ってシャッターチャンス逃すこともない。何より、フォーカスポイント探してそこにフォーカスフレームを持ってきてシャッター半押しという儀式がいらない。これは思った以上に快適で、撮ろうと思った次の瞬間にはフレーミングとシャッターチャンスに集中できるのだ。最新のプロ用一眼レフはフォーカシングのプロセスをいかに縮めるかに技術の粋を集めている。でも、目測フォーカスでパンフォーカス使うと、フォーカシングプロセスがゼロになる。短縮ではなくゼロだ。もちろん、目測で対応できる条件は限られている。でも、日常の多くで対応できる。いつでもどこでも最適を目指す大型プロ用一眼レフもいいけど、自分の場合、結局快適度の平均値が最強なのはM型ライカのマニュアルフォーカスだった。そして、マニュアルフォーカスが不得意なX100やRX100にはどうしても使いにくさを感じてしまう。で、結局、いつもいじりまわして遊ぶのはM9だ。
Leica M9, Noctilux f1.0
4.いじる楽しさ
M9は外装の機械的な工作精度が高い。電子制御全盛のこの時代、外装の工作精度など写りにはあまり関係なく、そこにコストをかけるのは合理性が無いのだけど、でも、おそらくマーケティング的な観点から未だに精度を落としていない。X100もRX100もよくできたカメラだけど、手間は中身にかけられていて、残念ながら外装のレベルはM9にかなわない。それは、実物を手に取ると如実に分かる。悲しいほど如実に分かる。そして、工作精度の低いX100やRX100には残念ながら物としての愛着が湧きにくい。仕事で海外に行った時、夜、寝る前にいじって遊ぶのはやはりライカだ。こどもじみているけど、でも、こういうオモチャで遊ぶ時間は、インスピレーション磨くのに大事なことだと信じている。なので多少大きくてもがんばってLeicaを持って行ってしまう。
Leica M9, Nokton classic 35mm f1.4 MC
5.がんばれる大きさ
実際、M9は十分小さい。X100を持っていける余裕があればまず間違いなくM9も収まる。確かにRX100よりは大きいけど、でも、バッグを持って旅に出る限りM9はパッキング可能だ。現行のLeica純正でのM9最小構成はM9 + Elmarit 28mmだ。全長3cmの小さなレンズを付けたM9は十分に小さい。実際は、ほとんどの場合、最高性能のレンズを複数本持っていける。これがLeica Mシステムの魔力だ。NikonやCanonの場合、最高性能のレンズに最高性能のボディを組み合わせると重さ数キロの巨大な塊になる。最高性能のレンズを複数本持ってゆけば5キロ越えの世界だ。加えて充電器が巨大で、充電器だけでM9 + Elmarit 28mmと同じくらいの大きさだ。正直、撮影中心の旅でなければ不可能だ。Leica Mシステムは違う。Leicaレンズの中でも重量級のNoctilux f1.0、Summilux 21mm、Summilux 75mmを3本まとめても2キロ行かない。結果、いいレンズでの写真が増える。心に刺さるショットが蓄積されてゆく。
Leica M9, Elmarit 28mm ASPH
6.Heritage
Heritageと言っても別にleicaブランドの伝統のことではない。僕はこの2年半で、これで機材コストの元は取れたと思えるような個人的な写真を何枚か撮ることができた。それは僕にとって永遠のショットとしていつまでも残るHeritageだ。そして、その永遠のショットはみなLeica Mシステムで撮ったものだ。だからLeica Mシステムは僕にとって特別なものだ。Mシステムとそれを創ってきた人々みんなに感謝したい。
Leica M9, Summilux 35mm ASPH FLE
なんだか抽象的な話になってきたので、その他、細かいポイントで気に入っているところを書き出すと、
・レンジファインダーは暗い所でもフォーカスし易い
・今や貴重な被写界深度表示が使い易い
・シャッターボタンと同軸のスイッチが使い易い
・背面のボタン配列がシンプルで醜くない
・充電器が小さい
という感じ。一方改善を期待したい点は、
・背面液晶が今やクオリティー悪すぎ
・高感度特性を改善して欲しい
・シャッター音はまあいいが、チャージ音が大き過ぎ
・できればライブビュー&動画使いたい
・バッテリーがもう少し持ってくれると安心
と、まあ、ことごとく新型のLeica Mで改善されているポイントばかり。非常に正しい進化ですね。この進化と100g増量のトレードオフをどう考えるかですね。あとM-Eについてはどうせ変更かけるなら液晶の品質上げて欲しかった。シャッターチャージが静かになったのはすばらしいです。
(Sep 19, 2012 執筆)
Leica M3メンテナンス&SF放浪レビュー
ライカM3メンテナンス&サンフランシスコ放浪reviewブログ
買ったときから一部割れていたグッタペルカを張り替えようと、ライカショップに僕のM3を持ち込んだ。ついでにチェックもしてもらうとシャッタースピードが出ていないそうだ。思い切ってメンテナンスに出した。待つこと一ヶ月、すっきりきれいになったM3が戻って来た。金額はM3の買い値と同じくらいの十数万円。昨年の話だ。
50年前に作られたカメラが普通にメーカーでメンテ受付してもらえ、きっちり仕上げてもらって完璧に現役状態で使える。これには感銘を覚えますね。
でもって、SFへの旅にM9とともに持参。
M9ばかりでM3の出番はないかなと思いきや、あまりに撮り心地よくて、かなりの時間をM3片手に歩きました。
Leica M3, Elmarit 28mm ASPH, T-MAX400
Leica M3, Summicron 50mm, T-MAX400
M3の機械式のリングやレバー、そしてシャッターボタンを直接押すダイレクトな感触が心地よく、古さも残るSan Franciscoの街に似合います。昔、機械式一眼レフに28mmと50mmの組み合わせでNew Yorkを徘徊した時を思い出し懐かしくなります。
Leica M3, Summicron 50mm, T-MAX400
露出は基本的に勘で。ごくたまにiPhoneの露出計アプリで確認。勘で適当にシャッターダイヤルと絞りリング回すのが、これまた心地いいんです。
Leica M3, Summicron 50mm, T-MAX400
Leica M3, Summicron 50mm, T-MAX400
あ、完全なノスタルジーなんですが、撮るの含めて趣味なんだし、気持ちがよければいいんです。気ままに歩きながら気に入った光景をパチパチ。場に陶酔して一体化してゆくこの感覚。
Leica M3, Elmarit 28mm ASPH, T-MAX400
Leica M3, Elmarit 28mm ASPH, T-MAX400
ちなみに28mmのファインダーはSIGMA DP1用の外付けを装着。これが超小型でほとんど邪魔になりません。
Leica M3, Summicron 50mm, T-MAX400
銀塩の心地よさ、そしてSummicron 50mm + Elmarit 28mmのミニマムなレンズセットの素晴らしさを実感した西海岸の旅でした。銀塩ライカMシステム、心に沁みます。
(Jun 11, 2011執筆)
Leica M9 レビュー
ライカM9 reviewブログ (Sep 9, 2010執筆)
プロローグ
フルサイズセンサーを搭載したM9は、銀塩時代の撮影スタイルが身に付いてしまった僕にとって、あまりに魅力的な製品だった。ライカに没入してしてしまう危険性を知っていたので、まずは中古品のM3に逃げた。でもそれは没入の始まりだった。M3のあまりに快適な撮影体験にはまり、その後とあるショップで瞬間的に在庫となったM9に遭遇するやいなや即決購入。次々に各種レンズに手を出しつつ現在に至っている。
Leica M9, Noctilux f1.0, at f1.0
圧倒的に世界最小の35mmフルサイズセンサー搭載デジカメ
M9の外観はM3以来のM型ライカの基本形を受け継いでいる。大きさは139x37x80(mm)と、M3の138x33.5x77(mm)とほぼ同じだが、厚みが10%ほど増えている。これはフランジバックが同じままセンサーと液晶の厚み分が後ろに飛び出したものなので、このレベルで済んでいるいるのは上出来だと思う。M3に慣れてしまった目には最初違和感を感じたが、すぐに慣れてしまった。
重量は電池込みで585g. これは何を表すかというと、M9が世界最小最軽量の35mmフルサイズセンサー搭載のデジカメだということ。このカメラに現行Mマウントレンズでおそらく最小のColor Skopar 35mm PII(134g)を着けると合計重量719gの世界最小35mmフルサイズデジカメだ。ちなみにCanonの最軽量フルサイズ機はEOS 5D MarkIIの890g(電池込み、本体のみ)、Nikonの場合はD700の995g(電池抜き!、本体のみ)とお話にならない。これだけで現代のデジタル版のライカMシステムは存在意義が十分にある。おおまかに言うとMシステムは同じスペックのEOSシステムと比べて4割軽量。ぎりぎり世界最小なのではなく、圧倒的に世界最小ということだ。大きなベンツとF1くらい違っていて、比べること自体が誤り。
作りはすばらしい。主要な部品は金属製で質感が高く、動きも剛性感があって、往年のライカの雰囲気を残している。ところが、背面のデジタル系の操作ボタンは樹脂製中心のいわゆるデジカメっぽい。電子ダイヤルと十字キーも樹脂製で、シャッターダイヤルやフレームセレクターのしっとりとした操作感とはあまりにかけ離れていて、とても同じ機械に付いた操作系とは思えない。このあたりがやや不思議。
バッテリーとSDカードの交換は、M8同様ライカの伝統を守った底蓋分離方式。この方式への固執には賛否あるが、カメラの底蓋としては造りが突出して良いので、僕はオマージュとして残してもいいのではと思ってる。
Leica M9, Nokton classic 35mm f1.4 MC, at f1.4
撮影感
Leica M9の機能についてはすでにあちこちでレビューされているので、細かく触れない。このレビューではどちらかというと写真を撮るのにばんばん実用してみた結果、どう感じたかを極めて主観的に書いてゆこうと思うし、その方が価値があると思う。
さて、まず撮影した感じなんだけど、これはもう、極めてライカ的といいますか、M3と同じく、空中に浮かぶブライトフレームで空間を切り取る感じ。ただ、ファインダー倍率がM3よりも落ちるので、若干ピント合わせしにくく、また両目開けたときに最初少し違和感あり。すぐ慣れたけど。
シャッター音はM8よりは小さいけど、銀塩Leicaよりはるかに大い。特にシャッターのチャージ音が昔の銀塩一眼レフのワインダーっぽいメカニカルな音。指を離すと巻き上げされる分離チャージのモードがあるけれど、ものすごく違和感があったのですぐやめてしまった。
まあ、M3と比べたら多少の違和感はあるが、すぐに慣れる。慣れればM3のごとくさっと情景を切り撮れる。しかもこちらは16GBのSD突っ込んでおけばフィルム20本以上入っているも同然。実に心地よく撮影可能。
28mmの広角を付けf8まで絞る。レンズの被写界深度指標を見ながら、ピントは勘で合わせておく。露出は日向と日陰だけ計って、あとはマニュアルで。おいしい景色があったらさっとカメラを構える。ファインダーはフレーミングだけに使う。場合によってはノーファインダー。あとはインスピレーションでシャッターを切る。どんな構図でも露出は暴れないし、ピント位置がどこにあってもファインダー像はクリアー。撮った直後に1秒間だけ表示されるレビュー画像をチラ見。次の瞬間にはもう別の絵を探して歩みを進める。Leicaを使うと、こういう撮り方が実に快適にできる。まあ、デジタル一眼でもできなくはないんだけど、オートマチック車のマニュアルモードと同じで、本来の使い方じゃないから心地よくない。ざらつくマニュアルフォーカスの感触、電子ダイアルで直感性に乏しい絞り調整、なにより重いから片手でさっというわけにはいかない。
Leica M9, Elmarit 28mm ASPH
カメラの基本的な知識があれば、さらにいくらでも応用できる。超広角付けて、地面にピント無限遠にしたカメラを仰向けに置き2秒セルフタイマー使って星空を撮影するとか、深めに絞ってピント近距離で目測で合わせ腰を落として路上の花を青空バックに仰ぎ見るように写すとか。絞り、シャッタースピード、ピント、フレーミングをすべて直感的に操作でき、しかも小型でハンドリングしやすいことがLeicaの特徴。いちいちメインメニューから下に降りなくても、この手の操作がさっとできる。まさに人馬一体。それが心地よい。
解像度
既に解像度テストはいろいろなサイトで実験済みなのでここではあえてテストはしません、が、現行35mmフルサイズセンサーとしては最高峰の一つ。Summilux 21mmをF8まで絞り込んで撮影した樹木を半切にプリントしたけど、もう、窓から景色みているみたいな圧倒的情報量。27インチディスプレイに全画面表示すると、もう吸い込まれそうで怖いくらい。
Leica M9, Summilux 21mm ASPH
やはりローパスレスの威力は凄まじい。
6bitコード
M9のCCDは、画面の周辺部のマイクロレンズの曲率が変化する特殊な設計で周辺部の劣化を防いでいる。この劣化防止を最適に行うためにカメラにどのレンズが着いているかレンズ交換ごとに入力する必要がある。最近のライカ純正レンズは6bitコードというマーキングがついていて自動で読み取れるんだけど、古いレンズやNOKTONのような他社製レンズの場合はこのコードが無いため、レンズ交換ごとに手動で入力する必要がある。はっきり言ってこれ、すごく面倒で、よく忘れてしまう。手元のライカ製旧型レンズは改造かな。一本13,650円也。ただ、NOKTON classic 35mm f1.4はそもそも改造不能。
世の中にはいろいろクリエイティブに工夫する方々がいらっしゃって、黒いテプラを使ってフェイクコードを書く手法が確率されている。僕もこれ試したんだけど、何度か着脱しているうちにすぐにテープがずれて認識不能。やはり面倒でもマニュアル入力が確実ですね。体を慣らさないと。
Leica M9, Noctilux f1.0
何故Mシステムの沼に誘われるのか
おかげさまで見事にレンズ沼って奴に浸かっているが、浸かれるってことは、Mシステムがすばらしいということだ。僕はカメラがAF化した時点でメインシステムをEOSシステムに切り替えた。キヤノンのEFレンズシステムもLレンズと呼ばれる高級レンズを中心にかなりマニアックだけど、残念ながら深くはまり込むことができなかった。何故か。
・ズームレンズにばかり注力し、単焦点レンズのリリースが遅い
・単焦点Lレンズは大鑑巨砲主義で明るいが大きくて重い
・非Lの小型単焦点レンズは設計が古くフルサイズの解像度についていけない
・一眼レフの構造上広角レンズが設計しずらく、すごいレンズが少ない
・そもそもAFレンズのためタッチ&フィールに劣る
・小型広角レンズのオートフォーカス機構が古くてうるさい
...etc
とまあ、理由を細かく書き出すとどんどん書けるんだけど、まとめると、
・小型高性能なレンズがない
・超高性能レンズは化け物みたいにでかくて日常利用不可
・利用頻度の高い広角が弱い
の3つ。
逆にMシステムはここがすばらしい。
・すべてのレンズが一眼レフ用レンズに比べて小型
・とくに超高性能レンズはレーシングマシンのように小型軽量
・35mm以下に伝説のレンズが数多く存在
おまけに、質感も最高だし、明らかに魅力度高い。
僕はEF50mmf1.0Lと兄弟にあたるEF85mmf1.2Lというレンズを持っている。EF50mmf1.0Lと大きさはほぼ同じで重さは数十グラム重い程度だ。このレンズ、本当にほれぼれする写りをするが、じゃあバケーションに連れてゆくかというと、絶対に不可能。重さも容積もありえないくらい巨大だからだ。はっきり言って、EOSの超高性能レンズは僕にとってはスタジオ用機材のようなものだ。だから悲しいことに圧倒的に出番が少ない。
ところがライカの超高性能レンズは十分移動に耐えられる。M9+Noctiluxなら南の島でのバケーションにも十分持って行く気になる。M9+Summilux21mmは旅先のレンタカーのドリンクホルダーに突っ込んでおけた。EFに21mm f1.4Lは存在しないが、出たとしてもこんな芸当は絶対にできない。
旅先に超高性能レンズを連れてゆく。非日常のすばらしい情景をこのレンズで写し込む。旅先から帰り、PCでじっくりと現像&作品作り。画面で見てレンズの性能に驚嘆し、半切くらいに大型プリンタつかって伸ばしてさらに唖然。次はもっと別のレンズで試したいと思いレンズ物色…。
と、こういうサイクルが恐ろしいことにくるくる回ってしまう。そして試すレンズ試すレンズそれぞれ個性的なのでサイクルが加速。
逆にCanonの高性能L単焦点の場合、重すぎて日常のスナップは不可で、ここぞという出番を待つ。きれいな景色の場所に旅行に行くも、家族連れに巨大な一眼レフシステムは不可能で、ライカやコンデジに取って代わられる。かといってモデルさん撮る撮影会とかにはシャイなので行かない。たまにLeicaレンズと性能比較のために、空き缶とかビルの遠景を撮影…というクリエイティブツールとしては悲惨な状態。ほんとうにごめんなさい85mmf1.2L様。
Leica M9, Noctilux f1.0
まとめ
デジタルライカMシステムの魅力の本質は世界最小の35mmフルサイズシステムであるということ。日常でも旅先でも無理せず超高性能レンズを多用でき、たくさんのシーンを写し、その性能に驚嘆。趣味としては最高だね。大型化してしまった一眼レフ用の超高性能レンズはもはやカメラ命という気合いがなければ外に持ち出せない。それは機動性が革命的だった35mm判カメラではなく、もはやスタジオ機材みたいなものではなかろうか。M9は、その事実を明らかにし、僕達に選択を迫ってくる。
Leica M3 レビュー
ライカM3 reviewブログ (0ct 21, 2009執筆)
はじめに
昔書いたレビュー記事をはてなに引っ越しさせてます。カメラについては時代背景もあるので昔のまま、レンズについては再編集してお届けします。
プロローグ
フルサイズデジタル一眼eos-1ds markIIの導入以降、僕の撮る写真はデジタル一辺倒になっていたが、いつも気になっていたのはライカの銀塩Mシステムだった。伝説とも言えるファインダー、人々が熱く語るモノとしての作りや存在感、いろいろな情報に触れる度、何度もライカ購入を思い立ったのだが、いつもぎりぎりのところで我慢できていた。僕はすでに写真はデジタルメインで行く割り切りができていて、デジタルならフルサイズと決めていたたため、M8には触手が動かなかった。だからライカを導入するならフィルムシステムということになるのだが、すでに手元にコンタックスのGシステムがあり、新たにフィルムシステムを大金を払って追加導入するのは無駄だからだ。ところがつい最近、ライカからフルサイズデジタルカメラM9が発表された。これでタガがが外れてしまった。何度目かのライカ熱が、過去最大級のレベルで襲ってきた。危険を察知した僕は、最小限の出費でこれをかわす策を突如思いついた。それが中古のM3購入である。Mシステム史上最高傑作とされるM3さえ買ってしまえば、M9含め他のボディーにあまり興味は湧かないだろう、フィルムカメラのM3ならそれほど使わない上に50mm未満の広角にファインダーが対応していないのでレンズ沼にはまる可能性もないだろう・・・。
しかしそれは大きな誤りだったことにすぐに気づくのである。
Leica M3, Nokton 50mm f1.5
Gシステムを捨てたくなる
さっそく中古カメラ店でM3を数台見せてもらい、よさそうなものを購入。十数万円也。レンズは中古でいいものがなかったので、中古ライカレンズより安いコシナ製の新品のNocton 50mm f1.5を購入して帰宅。久々に生のフィルムを装填。あちこちのサイト情報からフィルム装填のしづらさを覚悟していたのだが、なんなく完了。完全金属製のスプールや、厚みがあり剛性感の高い底板にいきなり感動。コストダウンが進んだ現代の日本製カメラではありえない贅沢な作り。こりゃ50年現役続けられる訳だと納得。
さっそくファインダーを覗く。その刹那、体に電気が走る。
「なんだこれは!」
両目を明けるとほんとうにブライトフレームが空中に浮いているのである。購入時にチェックするためファインダーを覗いてはいたが、いざフィルムを入れて「撮るモード」で覗いたとき、その本当の意味が瞬時に体で理解できた。カメラの向きを変えるとそれに合わせてフレームも移動する。まるで指で小さな四角を作ってフレーミングを試すときと同じように、自分をとりまく360度の風景の中で、自由にフレーミングできる。これは明るく高倍率のファインダーを使っているからできるのであって、実像よりも暗くて倍率も低い現代の一眼レフでは難しいことだ。この初めての体験は僕を夢中にさせた。空間を切って切って切りまくり、気がつくとあっというまに手元のロールを使い切っていた。
これは写真の取り方が変わると確信した。
デジタル一眼レフのファインダーは狙撃スコープに似ている。獲物をAFフレームで捉え、レリーズを半押しして、ピントを合わせる。合焦のするやいなや、対象物を四角いファイダー視野の納まりがいいところに移動させ、シャッターを切る。ついついそんな撮り方になってしまう。でもレンジファインダーは、自分を取り巻く360度の風景の中でフレームを自由に遊ばせ、いちばんいい切り取り方を探す。それからピントを合わせるべきポイントを考えながらフォーカスリングを回す。そしてタイミングをじっくり狙い、シャッターを切る。その各プロセスが実に奥深く、それぞれのプロセスでの自由度の高さを感じながら、自分の意思で自分の作品を作ってゆくのである。
あまりにすばらしい体験に、こんなにビューファインダーって気持ちよかったっけ?と思い、手元にあったContax G2のファインダーをのぞき愕然とした。あまりにフレームが狭く、画質も悪い。まるで別物だ。残酷なくらい違う。GシステムがあるからMシステムは不要という考えが根本的に間違っていたことを思い知らされた瞬間だった。
フォーカシングと露出
二重像合致によるピント合わせにはすぐになれた。フォーカスリングの動きと像の動きがほぼ線形なので、とても合わせやすい。実際、仕上がりを見ると久しぶりのマニュアルフォーカスにもかかわらずピンぼけはほとんどない。
露出計無しのマニュアル露出となると、多くの人は引くかもしれないが、慣れれば感覚でほぼ分かるし、そもそもネガフィルムを使う場合はラティテュードが広いのでスキャンや現像であとからでも救える。デジカメの自動露出だと明るい物や暗い物が画面に入ると不用意に露出がぶれる上、デジタルのラティテュードが狭いため、大事なショットはAEロック、仮撮影で露出チェック、補正をかけて本撮影みたいな手間がある。マニュアルでのネガ撮影の方が、はるかに露出の意思決定が簡単で、より撮影に集中できる。ネガの仕上がりを見ると露出計を忘れたときの撮影も含めて、全く問題はなかった。(ネガの上に何カ所かなにも写っていない箇所があったが、これは露出のミスではなく、キャップをかぶせたままでショットしたのが原因。やっぱ一眼ばかりつかっているとミスる)
フレーミング、フォーカシング、露出のどれもが使いやすく、特にフレーミングと露出についてはいつものデジ一を超える。使いやすさに酔いしれながら、僕はロールが尽きるまでシャッターを切り続けた。
Leica M3, Summicron 50mm
魅了される作り
M3は単純な機械式マニュアルカメラで、フィルム装填、シャッター速度設定、絞りの設定、ピント合わせ、フィルムの巻き上げと巻き戻しが基本操作で、付加機能にセルフタイマーとフォーカスフレームの手動表示が加わるくらい。極めて基本的な機能しかないが、そのどれもが機械的機構を使った手動操作によるところが現代のデジタル一眼と大きく異なる。そしてその機構がコストを無視した贅沢な作りで、精度、剛性とも高いことから、操作部はスムーズにしっとりと動き、止まるべきところでピタッと止まる。
コイツは気持ちいい!
家電化された現代のカメラの樹脂製スイッチの感触とは完全に別物だ。こういった感触のたぐいはM3を触っているうちにすぐに慣れてくるので、べつに毎回撮影するたびに感動するわけではない。が、しばらくM3を使った後に現代のデジカメのスイッチをさわると、あまりの安っぽさに放り出したくなる。恐ろしいことに、M3を触ったあとでは、現代のM9やMPにさえ軽い幻滅を感じてしまうのである。シャッター音については「コトリと落ちる」とか「ささやくよう」とかいろいろな記述を見かけるが、僕のM3は「チャッ」という感じで、静かだが、こもったような音ではない。
Leica M3, Summicron 50mm
小型軽量
Mシステムの大きなメリットは小型軽量であることだ。これは数字で見ると明らか。eosのフルサイズ機で最も軽量な組み合わせは5D Mark II (電池込みで890g)+EF50mm F1.8II(130g)の1020gとなるが、Mシステムで同様の組み合わせを行うとM3(595g)+Summicron 50mm(240g)で835gと約2割軽い。意外と違わないように思えるが、Canonの50mm F1.8IIはプラスチック銅鏡で徹底したコストダウンを計った結果の重量で、非常にしっかりした作りのSummicronと比べるのは酷かもしれない。大きさもまるで違う。レンズ装着時の大きさを比べると、
5D mark II + EF50mm F1.8II
幅152mm x高さ113.5mm x奥行き107mm
M3 + Summicron 50mm
幅138mm x高さ77mm x奥行き77mm
とMシステムがふたまわりくらいコンパクト。
正確な体積比ではないが、両者がぴったり収まる直方体の箱の体積で比較すると、Mシステムはeosシステムの44%しかない。ビジネスバッグの中でのかさばり具合がまるで違うのである。Mシステムの場合、さらに小型のコシナ製のColor-Skopar 35mm F2.5 PIIと組み合わせると奥行き(厚み)は56.5mmとなる。これはeosシステムの半分程度であり、バッグのちょっとした隙間に収納しやすい。
今度は大口径で比較してみる。
5D MarkII(890g) + EF35mm F1.4L(580g) = 1470g
M3(595g) + Summilux 35mm(320g) = 915g
と、Mシステムの方が500g以上も軽い。eosシステムはほぼ1.5kgで1.5Lの大きなペットボトル並の重量だ。撮影メインの外出でないとちょっとつらくなってくる。
さらに、両社でディスコンとなった50mm f1.0対決をすると、
5D MarkII(890g) + EF50mm F1.0L(985g) = 1875g
M3(595g) + Noctilux F1.0 3rd(630g) = 1225g
とMシステムが600g以上軽い。
このように高性能レンズほどMシステムの軽量化メリットは大きい。
EF85mm F1.2Lというeos用レンズによって、僕のレンズ観は一変したのだが、大好きなこのレンズ、ほぼ自宅室内専用レンズとなっている。
5D MarkII(890g) + EF85mm F1.2L(1025g) = 1915g
という数字自体ありえないが、実はこの組み合わせだとバランスが最悪で、信じられないかもしれないが、eos-1ds markIIに着けたときより重く感じてしまう。よって今は、
1Ds markII(電池込み1550g ) + EF85mm F1.2L(1025g) = 2575g
の巨大な塊として自室に転がっている。撮影目的の外出じゃないと持ち出す気にはなれない。でも写りは最高なので、中判カメラ代わりに気が向いたときに使っている。
このレンズと同等以上のドラマティックな写りが期待できるNoctilux f0.95は、カメラとのセットで、
M3(595g) + Noctilux F0.95(700g) = 1295g
で済んでしまう。これだったら外出時にかばんに忍ばせてもいいかもと、ちょっと思える重さだ(ほんとか?)。
デメリットは何か
Mシステムの利点ばかりあげてきたが、ではデメリットは何か。結論から言うと、特殊な状況での撮影は一眼レフにかなわない。Mシステムは日常生活で普通のシーンを普通にスナップする分には、慣れてくると一眼レフより使いやすい。しかし、昔の一眼レフのキャッチコピーじゃないが、顕微鏡から宇宙までみたいな汎用性は全くない。例えば、以下のような撮影は一眼レフの方が向いている。
・マクロ撮影
・望遠撮影
・完璧なフレーミングが求められるような撮影
・アオリやシフトが必要な建築写真の撮影
動きの激しい被写体もAF一眼向きという人もいるかもしれないが、広角レンズで被写界深度をうまくコントロールすることでMシステムでも意外とイケると僕は思っている。
Leica M3, Summicron 50mm
まとめ
いろいろなところでMシステムに対するインプレッションを読むと、その作りや、アクセサリーの豊富さなどハードウェアに対する賞賛が多い。
もちろん僕もMシステムのハードウェアのすばらしさには驚嘆しているが、実際使ってみると、Mシステムの価値の本質は、デジタル一眼レフとはまるで違う、ブライトフレームによる空間切り取り式の撮影方法にあると思う。まさに撮影体験の革命だ。それによって自分の撮る写真がどのように変わってゆくのかは今後の楽しみだ。