Camera&LensReview

Sorry Japanese only so far. Camera and lens review from photographer's viewpoint.

Leica Q2 レビュー

f:id:LANDS:20200129141705j:plain

イカQ2 Review ブログ
 

はじめに
昨年の夏、ヨーロッパに旅する機会があり、当初α9+標準ズームを基本にシステムを組むつもりで準備していた。そこへヨーロッパに熱波襲来の報。小ぶりのQへの変更を検討するが、せっかくの機会だし広角も標準も使いたい、けどQのデジタルクロップの50mmはありえないのでやっぱりα9か、けど重いと絶対いやになるし・・・と延々に悩むはめに。ふと脳裏に浮かぶQ2という危険な答えを、供給不足という噂でなんとか打ち消しながら気がつくと出発前日。アポの合間の時間にふと立ち寄った某店でQ2の待ち期間を尋ねたら「いまこの瞬間でしたら1台用意できます」という悪魔のささやき。当然のごとく店を出るときは紙袋をぶら下げていたのだった。

あいかわらず高い完成度
そんなわけで急遽前日手に入れたQ2は、全くテスト撮影もしないまま機内持ち込みバッグに詰め込まれる。取説は付属せずなんとpdfダウンロード方式になっていたので急ぎiPhoneに取り込み。準備にばたばたし、ゆっくり触ったのは飛行機に乗ってから。しかし、気圧の低い機内でワインを飲みながらメニュー画面いじったりiPhoneで取説読んだりしていると急激に眠気に襲われ爆睡。その後は入国準備やらチェックインやらでバタバタし、はじめてまともにカメラに向き合っのは、ロンドンの街にカメラを持って立ったときだった。

f:id:LANDS:20200125142849j:plain

Leica Q2

 

これまで何度も新機種購入という機会に恵まれたが、ここまで慌ただしいのは初めてだ。ほとんどいじる暇もなく、いきなりストリートに立って撮影本番。しかしQを使っていたため、なんの違和感もない。というか、大好きなロンドンの街を楽しく撮影しているうちに、新しいQ2で撮っているということをすぐに忘れてしまった。撮ってる限りQと何も変わらない。そりゃあ、シャッター音は少し静かだ。だけど雑踏では違いが分からない。EVFもきれいになってる。でもそんなに大きく違わないのですぐ慣れてしまう。少し重いはずだがほとんど差を感じない。特に純正グリップを付けていると重さの違いはほとんど意識できない。そう、いつもの大好きなQと一緒だ。僕はいつもの通り、街の雰囲気を味わいながらシャッターを切り続けた。

f:id:LANDS:20200125143058j:plain

Leica Q2

 

やっぱりQはいいカメラだ。ほんと心地よい。いや違ったQ2だ。そう、自分は今、買いたてのQ2を使っているのだ。なのに新しいカメラを使っている時の少しくすぐったいような高揚感は皆無だ。いつもの如くカメラの存在を忘れてひたすら撮影に没頭する。それくらいQは、そしてQ2は完成度が高いのだ。

 

気づいた点
しばらく使ってのQ2の印象は、やはり以前まとめたQの印象と全く同じ。素晴らしいカメラだ。しかし一応新機種だ。体感的によくなったことをまとめると、

  • 電池持ちが圧倒的に改善。供給不足でスペアバッテリーを入手できなかったが一日中撮り歩いても不安なし
  • 雑踏では分からないが室内ではシャッター音がさらにマイルドになったことを実感。場の雰囲気を壊さず撮影可能
  • 暗所性能が明らかに向上。Qでは高ISOで撮影しシャドーを持ち上げると帯状のノイズが出ることがあったがQ2では改善
  • サムホイールをワンプッシュしてISOダイアルにするインターフェスは使い勝手最高

といったあたり。耐候性が上がったことは当然体感はできなかったけど安心感が上がったのは確か。あ、あと、僕は違いますが、SLユーザーさんだとバッテリー共用できるというのも大きなメリットでしょう。そもそも完成度の高かったQの数少ない問題点を改善した正常アップデート版がQ2の位置づけだその時は思った。

f:id:LANDS:20200125143007j:plain

Leica Q2

 

Qとの比較テストで分かった本質
さて、しばらくヨーロッパで使って気になったのがハイライトの飛び。空が背景に入ったシーンのRAWデータをLightroomでハイライト落としても空の色が戻ってこないことが何度かあった。原因は評価測光。Qではいつも中央部重点測光にしていたため気にならなかったのだが、Q2ではおそらくデフォルトで評価測光になっていたためか、シャドーを基準にした明るめの露出になってしまい、空が飛びがちだった。空のブルーを活かしたいときは露出をマイナス補正にしておくか、中央部重点測光のままにすればOK。

f:id:LANDS:20200125143603j:plain

Leica Q2

 

とはいえ、一応気になったので、日本に戻ってからハイライトの粘りをQと比較実験。

f:id:LANDS:20200125142237j:plain

こちらのややハイキーな露出のRAWデータをLightroomでハイライト-100補正し、真ん中を切り抜いたものが以下。Qは100%クロップ。Q2はQと同じサイズになるように縮小。

まずISO100での比較。ロゴのGのとこで比べたところ、飛び具合はどちらも同じような感じ。

f:id:LANDS:20200125142309j:plain

Leica Q2 @ ISO100

 

f:id:LANDS:20200125142341j:plain

Leica Q @ ISO100

 

次にISO6400での比較。こちらはわずかにQ2の勝ち。加えてノイズなども含めQ2のほうが全般的に良好。やはり暗部性能はQ2の勝ちだ。

 

f:id:LANDS:20200125142421j:plain

Leica Q2 @ISO6400

 

f:id:LANDS:20200125142508j:plain

Leica Q @ ISO6400

 

ところで、このテストで一番驚いたのはISO100での解像感。Q2で撮った画像は4700万画素を2400万画素に縮小して切り抜いたものだ。なので一般的には解像感が高くなるはずだが、Qは全くQ2に負けていない。ここに今回の高画素化の理由が見え隠れする。今回の高画素化は28mm撮影時の解像度アップが目的ではない。こちらの開発者さんのインタビューを見ても分かる通り、高画素化はクロップした後の画素数を上げて実用性を上げるのが目的のようだ。

 

 

クロップズーミング
ということで、いよいよ核心が見えてきた。そう、Q2というカメラは単なるマイナーバージョンアップ機でもなければ、純粋な高画素機でも無いのだ。その本質は軽量コンパクトで高画質なまま28/35/50mmの切り替えができる3焦点カメラを本気で作りましたということなのだ。
50mmでクロップ撮影した時の画素数は4688x3128の1466万画素。十分な画素数だ。
実際、50mmクロップで撮った画像をA3でプリントしてみたが、全く問題なし。さすがSummilux&ローパスレスって感じ。こちらのブログによるとフルサイズ換算で開放時のf値は2.8相当。f1.4開放的なボケは期待できませんが、50mmっぽい立体感は十分に出ます。
ちなみに50mmクロップ時のセンサーサイズは、簡単な図形問題として計算すると、横36*28/50mm,縦24*28/50mmということで20.16mmX13.44mmということになる。このセンサーサイズで1500万画素ぐらいでローパスレスで標準レンズ搭載というと、過去の機種ではSIGMAのFOVEON機の名作DP2 Merillが一番近い。 28mm時はQとして使え、ボタン一つで50mmクロップ時はDP2 Merillに瞬時に切り替わるカメラ。これはかなり素晴らしいんじゃないでしょうか。

f:id:LANDS:20200125144959j:plain

Leica Q2 50mm-clopping


ここ10年カメラ片手にかなりの回数海外を訪問した。いろんな街を撮り歩いて改めて思う僕の理想のカメラシステムは、

  • 28ミリと50ミリのレンズを切り替えられる
  • なるべく小型
  • なるべく高画質

の3つを満たすものだという結論に至っている。
で、この理想に最も近いものは、M型ライカ+Elmarit28mm+Summicron50mmだ。
ただし、どうしてもレンズ交換の手間が生じる。これを解消しようとなるとトリエルマー28/35/50ということになるが、こいつはレンズが長いし暗いし、光学的な焦点切替式なので画質はどうしても落ちるし(そもそも製造中止だし)。これをf1.7通しで単焦点のSummilux画質でコンパクトなまま実現したのがQ2だ。


僕のように28mmを中心に撮影をし、たまに50mmで切り取るような撮り方をする場合Q2は理想的。M10-P+Elmarit28+Summicron50のセットより軽量で、メインとなる28mmではQ2の方が高画質。一方で昔の僕みたいに基本50mmでたまに28mm撮影というケースだと、うーんどうだろうw ボタンひとつでQ2になるDP2 Merill。まあ、唯一無二であることは間違いないですね。

f:id:LANDS:20200125144610j:plain

Leica Q2


さらなる洗練に向けて
ただし、まだ課題はある。

クロップを積極的に使い始めて数日もすると、だいたいの50mm枠線の位置が分かってくる。そうすると、ただただRaw現像ソフトのデフォルトのトリミング位置を設定するためだけにデジタルズームボタンを押すのが面倒になってくる。特に急いでいるときはデジタルズームボタン押さずに撮影し、後から手動トリミング。それで何の問題もない。特に僕の場合は28mmがメインなので、たまに撮る50mmとのショットがどれだったかは大体覚えているんで。

例えばこれなんかそう。デジタルズームボタン押さずに後からトリミングで抜いたもの。

f:id:LANDS:20200125143807j:plain

Leica Q2 50mm-clopping by Lightroom

 

ちなみに元画像はこちら

f:id:LANDS:20200125144211j:plain

Leica Q2 no cropping


うーん、デジタルズームボタンってなんのためにあるのだろうかw

デジタルズームで抜いたRAW画像をLightroomに読み込むと、デフォルトで50mmにトリミングされた状態で表示されるが、データとしては28mm撮影のエリアも残っている。Lightroom上ではただそれだけ。50mmでクロップ撮影しましたというフラグはない。なので、現像時に初期化ボタンを押すと、トリミングが無くなり28mm撮影の画像になってしまい、50mmでクロップ撮影したという情報が失われてしまう。もとに戻すには手動で画面の真ん中あたりで4690X3130に切り抜かないと戻せないというw まあ現像ソフトはLeicaがつくってるわけではないので仕方ないのですが。やはりRAWメインで運用してる場合、撮影時にクロップボタン押す意味が薄いかな。

また、EVF表示にも一言言いたい。Q2は28mm固定レンズカメラなので、M10-pのように28mmフレームを確認するためにフィンダー内で目をぐるりと回す必要はなく、楽に28mm撮影時の全景が見えるよう低めのファインダー倍率になっている。問題はここに50mm枠を表示させると、小さすぎてフレーミングしにくいのだ。M型の伝統を守ったというのは分かるんだけど。
ここはぜひ50mmクロップ時はファインダー倍率上げていただいて、できればM3と同じ0.9倍表示してあげられると、M型ユーザーは感動間違いなしです。
あるいは、28mm枠と50mm枠同時表示もユーザー的にはうれしいぞ。トリミングは覚えておいてあとで手動でやるからいいし・・・と書きながら今ふと思いついた。常時50mmトリミングでRAW撮影しておけば50mmと28mmで常にRAW撮影していることになるじゃん。今度試してみよう。

ともあれ、本格的なフルサイズクロップズームはこのLeica Q2がパイオニアとなる。初めての試みなのでまだまだUXを洗練させる余地大かと。特に上記のファインダー表示の変更とかはファームアップでできることなので期待したいです。また、ユーザー側も使い慣れてくるとどんどん新しい使い方を発見できるかも。例えば、マクロモード撮影時には50mmクロップで撮るといい感じのパースで写るとか最近気づいた。これからの使いこなしが楽しみです。

f:id:LANDS:20200125144406j:plain

Leica Q2


まとめ
さて、長々と書いてしまいましたが、そろそろまとめを。

f:id:LANDS:20200125145643j:plain
Leica Q2

 

Q2のメリット

  • 基本機能の改善(バッテリー強化、静音化、暗部性能向上、サムホイール機能追加、耐候性アップなど)
  • 押すだけでDP2 Merillに切り替えられるボタンの搭載

デメリット

  • ちょっと重い重量とファイルサイズ
  • 2割増の値段

 

正直、基本機能の改善はマイナーバージョンアップくらいの感じなので、重量とファイルサイズ増と相殺。
どうやらまだしばらくはQも併売されるようなので、これから購入するみなさんは、値段2割追加してボタン一つでDP2 Merillに切り替える機能を追加するかどうかが判断基準でしょうか。
あ、あと最後にマイナーイシューを一つ。背面液晶画面での撮影時に撮影情報が画面上下に表示されるのですが、この背景のシェードが濃くてQでも気になっていたのがさらい濃くなって、本来映り込むエリアを黒く覆い隠してしまってフレーミングしづらい。これは早急にファームアップデートでなんとかしてほしいです。