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Camera&LensReview

Sorry Japanese only so far. Camera and lens review from photographer's viewpoint.

Leica M3 レビュー

カメラレビュー

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ライカM3 reviewブログ  (0ct 21, 2009執筆)

 

はじめに

昔書いたレビュー記事をはてなに引っ越しさせてます。カメラについては時代背景もあるので昔のまま、レンズについては再編集してお届けします。

 

プロローグ

フルサイズデジタル一眼eos-1ds markIIの導入以降、僕の撮る写真はデジタル一辺倒になっていたが、いつも気になっていたのはライカの銀塩Mシステムだった。伝説とも言えるファインダー、人々が熱く語るモノとしての作りや存在感、いろいろな情報に触れる度、何度もライカ購入を思い立ったのだが、いつもぎりぎりのところで我慢できていた。僕はすでに写真はデジタルメインで行く割り切りができていて、デジタルならフルサイズと決めていたたため、M8には触手が動かなかった。だからライカを導入するならフィルムシステムということになるのだが、すでに手元にコンタックスのGシステムがあり、新たにフィルムシステムを大金を払って追加導入するのは無駄だからだ。ところがつい最近、ライカからフルサイズデジタルカメラM9が発表された。これでタガがが外れてしまった。何度目かのライカ熱が、過去最大級のレベルで襲ってきた。危険を察知した僕は、最小限の出費でこれをかわす策を突如思いついた。それが中古のM3購入である。Mシステム史上最高傑作とされるM3さえ買ってしまえば、M9含め他のボディーにあまり興味は湧かないだろう、フィルムカメラのM3ならそれほど使わない上に50mm未満の広角にファインダーが対応していないのでレンズ沼にはまる可能性もないだろう・・・。

しかしそれは大きな誤りだったことにすぐに気づくのである。

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Leica M3, Nokton 50mm f1.5

 

Gシステムを捨てたくなる

さっそく中古カメラ店でM3を数台見せてもらい、よさそうなものを購入。十数万円也。レンズは中古でいいものがなかったので、中古ライカレンズより安いコシナ製の新品のNocton 50mm f1.5を購入して帰宅。久々に生のフィルムを装填。あちこちのサイト情報からフィルム装填のしづらさを覚悟していたのだが、なんなく完了。完全金属製のスプールや、厚みがあり剛性感の高い底板にいきなり感動。コストダウンが進んだ現代の日本製カメラではありえない贅沢な作り。こりゃ50年現役続けられる訳だと納得。

さっそくファインダーを覗く。その刹那、体に電気が走る。

 

「なんだこれは!」

 

両目を明けるとほんとうにブライトフレームが空中に浮いているのである。購入時にチェックするためファインダーを覗いてはいたが、いざフィルムを入れて「撮るモード」で覗いたとき、その本当の意味が瞬時に体で理解できた。カメラの向きを変えるとそれに合わせてフレームも移動する。まるで指で小さな四角を作ってフレーミングを試すときと同じように、自分をとりまく360度の風景の中で、自由にフレーミングできる。これは明るく高倍率のファインダーを使っているからできるのであって、実像よりも暗くて倍率も低い現代の一眼レフでは難しいことだ。この初めての体験は僕を夢中にさせた。空間を切って切って切りまくり、気がつくとあっというまに手元のロールを使い切っていた。

これは写真の取り方が変わると確信した。

デジタル一眼レフのファインダーは狙撃スコープに似ている。獲物をAFフレームで捉え、レリーズを半押しして、ピントを合わせる。合焦のするやいなや、対象物を四角いファイダー視野の納まりがいいところに移動させ、シャッターを切る。ついついそんな撮り方になってしまう。でもレンジファインダーは、自分を取り巻く360度の風景の中でフレームを自由に遊ばせ、いちばんいい切り取り方を探す。それからピントを合わせるべきポイントを考えながらフォーカスリングを回す。そしてタイミングをじっくり狙い、シャッターを切る。その各プロセスが実に奥深く、それぞれのプロセスでの自由度の高さを感じながら、自分の意思で自分の作品を作ってゆくのである。

あまりにすばらしい体験に、こんなにビューファインダーって気持ちよかったっけ?と思い、手元にあったContax G2のファインダーをのぞき愕然とした。あまりにフレームが狭く、画質も悪い。まるで別物だ。残酷なくらい違う。GシステムがあるからMシステムは不要という考えが根本的に間違っていたことを思い知らされた瞬間だった。

 

フォーカシングと露出

二重像合致によるピント合わせにはすぐになれた。フォーカスリングの動きと像の動きがほぼ線形なので、とても合わせやすい。実際、仕上がりを見ると久しぶりのマニュアルフォーカスにもかかわらずピンぼけはほとんどない。

露出計無しのマニュアル露出となると、多くの人は引くかもしれないが、慣れれば感覚でほぼ分かるし、そもそもネガフィルムを使う場合はラティテュードが広いのでスキャンや現像であとからでも救える。デジカメの自動露出だと明るい物や暗い物が画面に入ると不用意に露出がぶれる上、デジタルのラティテュードが狭いため、大事なショットはAEロック、仮撮影で露出チェック、補正をかけて本撮影みたいな手間がある。マニュアルでのネガ撮影の方が、はるかに露出の意思決定が簡単で、より撮影に集中できる。ネガの仕上がりを見ると露出計を忘れたときの撮影も含めて、全く問題はなかった。(ネガの上に何カ所かなにも写っていない箇所があったが、これは露出のミスではなく、キャップをかぶせたままでショットしたのが原因。やっぱ一眼ばかりつかっているとミスる)

フレーミング、フォーカシング、露出のどれもが使いやすく、特にフレーミングと露出についてはいつものデジ一を超える。使いやすさに酔いしれながら、僕はロールが尽きるまでシャッターを切り続けた。

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Leica M3, Summicron 50mm

 

魅了される作り

M3は単純な機械式マニュアルカメラで、フィルム装填、シャッター速度設定、絞りの設定、ピント合わせ、フィルムの巻き上げと巻き戻しが基本操作で、付加機能にセルフタイマーとフォーカスフレームの手動表示が加わるくらい。極めて基本的な機能しかないが、そのどれもが機械的機構を使った手動操作によるところが現代のデジタル一眼と大きく異なる。そしてその機構がコストを無視した贅沢な作りで、精度、剛性とも高いことから、操作部はスムーズにしっとりと動き、止まるべきところでピタッと止まる。

コイツは気持ちいい!

家電化された現代のカメラの樹脂製スイッチの感触とは完全に別物だ。こういった感触のたぐいはM3を触っているうちにすぐに慣れてくるので、べつに毎回撮影するたびに感動するわけではない。が、しばらくM3を使った後に現代のデジカメのスイッチをさわると、あまりの安っぽさに放り出したくなる。恐ろしいことに、M3を触ったあとでは、現代のM9やMPにさえ軽い幻滅を感じてしまうのである。シャッター音については「コトリと落ちる」とか「ささやくよう」とかいろいろな記述を見かけるが、僕のM3は「チャッ」という感じで、静かだが、こもったような音ではない。

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Leica M3, Summicron 50mm

 

小型軽量

Mシステムの大きなメリットは小型軽量であることだ。これは数字で見ると明らか。eosのフルサイズ機で最も軽量な組み合わせは5D Mark II (電池込みで890g)+EF50mm F1.8II(130g)の1020gとなるが、Mシステムで同様の組み合わせを行うとM3(595g)+Summicron 50mm(240g)で835gと約2割軽い。意外と違わないように思えるが、Canonの50mm F1.8IIはプラスチック銅鏡で徹底したコストダウンを計った結果の重量で、非常にしっかりした作りのSummicronと比べるのは酷かもしれない。大きさもまるで違う。レンズ装着時の大きさを比べると、

 

5D mark II + EF50mm F1.8II
幅152mm x高さ113.5mm x奥行き107mm

 

M3 + Summicron 50mm
幅138mm x高さ77mm x奥行き77mm

 

とMシステムがふたまわりくらいコンパクト。

正確な体積比ではないが、両者がぴったり収まる直方体の箱の体積で比較すると、Mシステムはeosシステムの44%しかない。ビジネスバッグの中でのかさばり具合がまるで違うのである。Mシステムの場合、さらに小型のコシナ製のColor-Skopar 35mm F2.5 PIIと組み合わせると奥行き(厚み)は56.5mmとなる。これはeosシステムの半分程度であり、バッグのちょっとした隙間に収納しやすい。

今度は大口径で比較してみる。

 

5D MarkII(890g) + EF35mm F1.4L(580g) = 1470g

M3(595g) + Summilux 35mm(320g) = 915g

 

と、Mシステムの方が500g以上も軽い。eosシステムはほぼ1.5kgで1.5Lの大きなペットボトル並の重量だ。撮影メインの外出でないとちょっとつらくなってくる。

さらに、両社でディスコンとなった50mm f1.0対決をすると、

 

5D MarkII(890g) + EF50mm F1.0L(985g) = 1875g

M3(595g) + Noctilux F1.0 3rd(630g) = 1225g

 

とMシステムが600g以上軽い。

このように高性能レンズほどMシステムの軽量化メリットは大きい。

EF85mm F1.2Lというeos用レンズによって、僕のレンズ観は一変したのだが、大好きなこのレンズ、ほぼ自宅室内専用レンズとなっている。

5D MarkII(890g) + EF85mm F1.2L(1025g) = 1915g

という数字自体ありえないが、実はこの組み合わせだとバランスが最悪で、信じられないかもしれないが、eos-1ds markIIに着けたときより重く感じてしまう。よって今は、

1Ds markII(電池込み1550g ) + EF85mm F1.2L(1025g) = 2575g

の巨大な塊として自室に転がっている。撮影目的の外出じゃないと持ち出す気にはなれない。でも写りは最高なので、中判カメラ代わりに気が向いたときに使っている。

このレンズと同等以上のドラマティックな写りが期待できるNoctilux f0.95は、カメラとのセットで、

M3(595g) + Noctilux F0.95(700g) = 1295g

で済んでしまう。これだったら外出時にかばんに忍ばせてもいいかもと、ちょっと思える重さだ(ほんとか?)。

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デメリットは何か

Mシステムの利点ばかりあげてきたが、ではデメリットは何か。結論から言うと、特殊な状況での撮影は一眼レフにかなわない。Mシステムは日常生活で普通のシーンを普通にスナップする分には、慣れてくると一眼レフより使いやすい。しかし、昔の一眼レフのキャッチコピーじゃないが、顕微鏡から宇宙までみたいな汎用性は全くない。例えば、以下のような撮影は一眼レフの方が向いている。

・マクロ撮影

・望遠撮影

・完璧なフレーミングが求められるような撮影

・アオリやシフトが必要な建築写真の撮影

動きの激しい被写体もAF一眼向きという人もいるかもしれないが、広角レンズで被写界深度をうまくコントロールすることでMシステムでも意外とイケると僕は思っている。

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Leica M3, Summicron 50mm

 

まとめ

いろいろなところでMシステムに対するインプレッションを読むと、その作りや、アクセサリーの豊富さなどハードウェアに対する賞賛が多い。
もちろん僕もMシステムのハードウェアのすばらしさには驚嘆しているが、実際使ってみると、Mシステムの価値の本質は、デジタル一眼レフとはまるで違う、ブライトフレームによる空間切り取り式の撮影方法にあると思う。まさに撮影体験の革命だ。それによって自分の撮る写真がどのように変わってゆくのかは今後の楽しみだ。