Camera&LensReview

Sorry Japanese only so far. Camera and lens review from photographer's viewpoint.

Leica M10 レビュー

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ライカ M10 reviewブログ

 

プロローグ

M3,M9と続けて購入しマニアックなM用レンズにも次々手を出した僕だが、過去記事の通り、長い間レビューから遠ざかっていた。その間ひたすらRX100シリーズを使い倒していた。M240をスキップしたからだ。

M240にはとても期待していた。しかし実物を触ったときのコレジャナイ感が凄まじかった。厚くて重いので手にしっくりこない。レスポンスも遅い。色味もあっさり。どうしたものかと悩んでいるうちに値段も上がり、完全に購入タイミングを逃してしまった。RX100シリーズがあまりに手軽な上、日中の画質はA3くらいまでのプリントには十分。満足した僕は一時はMレンズは大幅整理してしまおうかと考えた時期もあった。しかし昨年、M9で撮った写真を見返していて、1inchセンサーで自分の目が堕落してしまったことを自覚。再度フルサイズの常用を検討。

そして遅ればせながらLeica Q(別途レビュー書きます)を導入した。

このカメラは、僕にとって久々の革命だった。改めてLeica社(及び裏で手伝ったと噂のパナソニック社)に敬意を払うとともに、Mレンズのキープを確定。新型ボディーとしてType262を本格検討始めていた矢先、ついにM10の噂が流れてきた。

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Leica M10, Summicron 50mm

 

待ちに待ってた正常進化

僕は今でもM9が好きだし、現役カメラとして時々使っている。なにせフィルムのM3からライカに入ってるんでM9でも基本的には文句無し。しかしだ、M9はやはり古い。M240後継機には、具体的には以下の点を大いに期待していた。

 

1. 高感度性能

ISO1600までならフルサイズのM9の方が強い。しかし、M9は3200以上には設定すらできない。RX100は塗り絵画質だが6400までは撮れる。

 

2. ライブビュー

撮影アングルの自由度が増すので、もはや不可欠。

 

3. 液晶の質

M9の液晶は完全に時代遅れの代物。

 

4. 大きなシャッター音

Mシリーズのコンセプトに反する、M9のパコッと派手なシャッター音はなんとかしてほしい。

 

5. 軽量化/スリム化

上記1から4は一応M240で実現されていた、が、結局重くて厚くて、僕はM240をスキップしてしまった。

 

6. wifiスマフォ接続

これで自分の旅先での自由度が飛躍的に高まった。ノートPCなしでも現像処理してSNSでシェア可能は後戻り不可の革命。

 

M10はこのリストをすべて実現してくれた。若干不満に残る部分もあるが、間違いなく僕の望む方向に進化してくれた。そう、待ちに待っていた正常進化だ。

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Leica M10, Apoqualia-g 28mm f2.0

 

高感度性能について

これについては今更僕が実験せずとも、あちこちで結果が出ているのでそちらを参照されたい。だいたい、M240比較で2段、SL比較で0.5段の改善ということらしい 。

http://www.slack.co.uk/leica-m10.html

実際、暗いところでも普通に映る。普通の現代のフルサイズデジカメだ。普通なんだけど、Leicaで普通というのは素晴らしい。過去のM9のレビューにも書いたように、電子的な性能が普通以下でも使いたい理由がたくさんある。それが普通になった瞬間に、Leicaは奇跡のカメラになる。

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Leica M10, Summicron 50mm

 

ライブビュー

実は今回M10で一番感動したのがこれだ。なにせM240スキップしてるんで、M型でのライブビューは初めて。あのNoctilux f1.0のピントの山がちゃんとつかめる!それだけで素晴らしい。で、みなさん、気になるのはレスポンスでしょう。
以下、ファーム1.3.4.0にて。

  • メインスイッチONの状態からLVボタン押してLV画面が表示されるのは瞬時
  • LV画像のカクカクは全くなし
  • シャッター切ってブラックアウトする時間もゆっくり瞬きするくらい。Sモードで続けてシャッター切って、体感で2コマ/secくらいの連射が可能。
  • LVモードのままメインスイッチOFFにして、またメインスイッチONにしてディスプレイ表示が復帰するまでの時間がやや遅い。ストップウォッチで複数回計測しましたが、ざっくり1.5秒弱。

ちなみにRX100M3でスイッチオンしてからディスプレイ表示復帰までの時間がだいたい1.2秒くらい。RX100はレンズが伸びるという儀式も行った上でのこの時間。わずかですがM10が遅いですね。ファームアップでもう少し高速になることを期待。

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Leica M10, Summicron 50mm

 

液晶の質

はい、M9との比較なんで、天国です。ちなみにQも天国でした。QとM10と比べると、どうでしょう、同じくらいの天国感?すいません、なにせM9から這い上がってきたんで、全部良く見えます。

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 Leica M10, Summilux 35mm ASPH FLE

 

シャッター音

M240触って唯一感動したのがシャッター音。とても静かでした。M10のシャッター音はそれと比べるとシャキシャキしててやや高音が響きます。しかし、M9から比べるとようやくライカらしいおとなしい音になりました。手元にあるカメラで1/60secでの音の大きさを体感比較すると、

M9 >> D810 = M3 > M10 >> Q

という感じ。M3よりM10の方が音が小さいというのは意外でした。M3は静かなのですが少し音が響きます。一方で、M10はややこもった感じ。Qはレンズシャッターなので別次元。ちなみにD810は一眼レフなので絶対音が大きいはずですが、非常にソフトに消音されていています。D810とM3はボリューム的には同じくらいなのですが、M3の方がやや高音なので若干目立つかも。ああ、M3の静音シャッター神話が!

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Leica M10, Summicron 50mm

 

軽量化/スリム化

M3がとても手になじんでいたので、デジタルライカのスリム化は本当に嬉しい。今回は珍しく発表初日に実機も見ずに予約を入れたわけですが、このスリム化は背中を押す効果が高かった!で、その後実際に手にとって見ると、、、うん、確かにM9より薄い、M240は論外、、、だけど、M3ほどのすっきり感は無いなあ。

実際測ってみたらM3のトップカバーの厚みは約31mm強、M10は約33mmとその差2ミリ弱。だいたい6%くらいの差ですね。ちなみにM9は36mm。M10はM3とM9の真ん中よりちょいM3に近いくらいの薄さ。いやあ、よくやりました。だって構造的に難しいだろうって諦めてたんだもん。スリム化の現実的な方法はマウントを出っ張らせることだけど、Leicaは意匠的にそれはしないだろうと思ってた、だけど、今回、ほとんど気づかないくらいマウントを前に出した。大きなデザイン変更ないのに違和感がない絶妙なレベルでの前出し。M10のデザインって、ものすごい緻密バランスの元に成り立っていると思います。

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背中合わせの初号機(M3)と最新機(M10)

 

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お背中の雰囲気もよく似てる

 

重さ。重いです。M240よりはちょっと軽いですが、やはり重いです。ただ、なんというか、意外と違和感が無い。M240持ったときはデブったボディーとあいまって、ある種嫌悪感を感じる重さでした。この違いはなんだろうと考えてたんだけど、実はM10はM3持ったときの体感に近いんです。M3は重いカメラです。薄いんで軽そうにみえるんだけど、手に取るとずっしりくる。でも、手のひらへの収まりいいんで、長時間持ってもさほど疲れない。M10もそんな感じ。デジタルライカとしては薄いんだけど実は重くって、でも薄くて持ちやすいので疲れない。心地いい重さ。ちなみに重さも比較を書いておくと、

M240(680g) > M10(660g) >> M3(595g) > M9(585g)

デジタルはみんなバッテリー込。おかしいなあ、M10 >> M3なのに体感似てるんだよなあ。やっぱ薄さは見た目にもホールディングにも効いてるんですかね。

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Leica M10, Apoqualia-g 28mm f2.0

 

wifiスマフォ接続

もうこれないと旅先に連れてゆきたくなくなるほど、今や僕にとって必須の機能。スマフォ画面はデジカメの液晶の倍以上の大きさで画質も最高だし、カフェでちょいひと休みしつつの作品チェック、SNSへのシェアは楽しみの一つ。ようやくMでこれができるようになりました。できるだけで天国。

ただし、もちろんお約束どおり、初期段階の現時点ではアプリもカメラ側も使いにくい。しかもAndroid版出てないし。改善&リリース早くやっていただけると幸いです。

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Leica M10, Summicron 50mm

 

でもって全体的にどうなのよ

細かく機能ごとにインプレ述べてきましたが、じゃあ、全体的にどう感じるのか。はい、普通にMです。いつものMです。それが暗いところでも現代のデジカメのように使える。あと、Noctiで厳密なピント合わせができる。そういうちょい特殊な状況で対応できるようになったのが進化なのですが、それ以外のほとんどを占める普通のシーンでの普通の撮影ではM3やM9と一緒です。

これはすごいことです。

要は、技術の進化を超えて伝えられる普遍的なユーザー体験がMシステムでは確立してるんです。それが何なのかは過去に書いたM3のレビューで表現したつもりです。
M10は間違いなくこれからのMの歴史を引き受ける、正統派の名機です。

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Leica M10, Summicron 50mm

 

ISOダイアル

そうそう、ISOダイアルについて書いておきましょう。デジタル移行してから、ずっと僕にとっての夢は、ISOダイアル、シャッターダイアル、絞りリングの3つを備えたカメラが登場することだった。で、初めてのそのカメラはNikonから出た。Dfだ。これが全く使い物にならい。だっていちいちロック解除しないとダイアル回せないんだもん。で、ようやく自由に回せるISOダイアルを持って登場したのがM10だ。回して使うときは上に引っ張り上げておかないといけなくて、その引き上げがやりにくい。が、上げとけばそのまま好きに回せる。さすがLeicaさん、写真撮影のUXを理解していらっしゃる。ところがですよ、このISOダイアルほとんど使ってない。だって高感度性能が優秀すぎるんだもん。M9のときは勝手にISO上げられるのが嫌すぎてISOは常にマニュアル設定。ええ、フィルムと同じ感じです。で、フィルム交換くらいのインターバルで、ISO見直す。だから、すごく期待してたんですけどねぇ。M10は多少ISO上がっても画質破綻しませんからねえ。このダイアルについてはまだ使いこなせてないと思うんで、もうすこし試してみます。

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Leica M10, Summicron 50mm

 

その他気になったことをまとめておきます

  • 純正ストラップが革製に!しかも僕の好きな長さ調節なしの一枚タイプ。こいつは素晴らしいです。ただしちょっと長い。
  • 光学ファインダーでISOが確認できない。ISO-autoでこれはちょっと困る。
  • バッテリー持ちは思ったより全然いい。ライブビューをたまに使った撮影しても、M9より持つかも。ただ、wifi使うと劇的に電池食う。できればファームアップデートでチューニングしてほしい。
  • ファインダー倍率/視野は数値上変わってるが体感の差はあまりない
  • 親指ひっかける出っ張りがM240より出っ張って引っ掛けやすくなった。ホールディングしっくり来るのに効いている。さらにサムレスト追加は不要では?
  • 前面の右手がかかるあたりにあるボタンは、いろいろ機能割当できるようにしてほしい。

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Leica M10, Summicron 50mm

 

まとめ

とりあえず正常進化で一安心。もう少し使い込んで報告したいと思います。

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Leica M10, Summicron 50mm

 

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Leica M10, Summicron 50mm