Camera&LensReview

Sorry Japanese only so far. Camera and lens review from photographer's viewpoint.

Summicron 50mm f2 レビュー

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ズミクロン 50mm f2 reviewブログ

 

プロローグ

M9購入欲をかわすため、2009年にM3 + Nokton50mm f1.5を導入したわけだが、あまりのすばらしさに銀塩に再び目覚め、日常M3を持ち歩くようになってしまい、購入数日後には鞄に収まりやすいライカ純正レンズということで現行Summicron 50mmを追加購入してしまった。おそろしや。

 

あふれかえる標準レンズ

常用レンズの焦点距離と年齢は比例するという説があるらしいが、僕の場合は逆で、学生のころは90mmが僕にとっての標準だったのだが、その後50mmに目覚め、長らく50mmばかり使っていた。ここ数年は広角に目覚め、28mmや24mmをよく使っている。

50mmを常用する僕なりの理由は、対象を見つめるような視線で撮影が出来るレンズのうちでもっとも広角なものだからだ。90mmだと対象物にピンを合わせて背景はぼかす描写ができ、背景がうるさくても絵にしやすいので以前愛用していた。でも、背景も含めた絵作りをするようにスタイルが変わってきて、やがて背景をぼかすことも生かすこともできる焦点距離ということで50mmに落ち着いたというわけだ。そして、気がつくと、50mm近辺のレンズが手元に集まってくる。性能の割に安いんでついつい手が伸びる。気がつくと10本オーバー。でもそれぞれに思い入れがあるためなかなか整理できない。とにかく、僕は50mm標準レンズが好きなのだ。

 

外観と感触

さてSummicron 50mmについて。そもそもズミクロンは空気レンズのアイデアを盛り込んだ初代に始まり・・・といった歴史や雑学の話はここでは省略。実際に写真を撮るのに使った上でのリアルな感想をきわめて主観的に書きます。

まずなんといっても小さい。エスプレッソ用のデミタスぐらいのボリューム。Canonのモーター内蔵の大きなレンズに慣れているとまるでミニチュア。だけど質感はおそろしく高く、ぎゅっと詰まっている感じ。フォーカスリングは購入直後にわずかに粘りを感じたが、何回か回しているうちにグリスが回ってウルトラスムースに。と言っても軽すぎず、止めるべきポイントで指の力をすっと緩めるとぴたっと止まる絶妙な感じ。すばらしい。

フードは内蔵タイプでロック機構なし。肩からかけているうちにフードが体にぶつかって引っ込んでしまうことがあり、これを嫌う人は外付けのフードを使う人がいるらしい。僕は携行性重視なので収納時に引っ込んで余計な荷物にならない内蔵フードが好み。引き出した後のロックがあればと思っっていたこともあったが、使っているうちに自動車のクラッシャブルゾーン的な役割があることを理解。この仕様で満足です。

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Leica M3, Summicron 50mm, at f2

 

そして写りは

写りに関してまず言えることが、開放からすでに完成しているということ。世の中のレンズは、開放でふわっとしていて、絞り込んでシャープにというものが多いが、現行Summicron 50mmは巷でも言われている通り、開放からシャープで絞ってもシャープ。絞りによる表情の変化がほとんどないレンズ。これが人によってはつまらないようで、優等生レンズなんて言われているようだ。銀塩時代に僕が最も多用していたのがPlanar 50mm f1.4 MMなんだけど、このレンズ、開放だと描写が甘めで、それ生かして作画するときは別として、ほとんどの場合ちょっとだけ絞ったf2を開放f値として使っていた。そういう撮り方が身に付いてしまっているので、開放から描写ばっちりで、加えて、開放がf2な分、小さく収まっているSummicron 50mmは僕にはとても合理的。

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Leica M3, Summicron 50mm

 

上の写真は初めてSummicronを装着した1本目のロールからだが、この400TMYのネガをGT-X770でスキャンしてLightRoomに読み込んで表示した瞬間、ちょっと感動した。トーンカーブなどなにもいじらない素の状態で完璧に近い絵が出来上がっていたからだ。そもそもスキャン行為を通しての絵なので、すべてがSummicronの力と断言できるわけではないが、世の中で言われているSummicron 50mmのモノクロ表現力の高さ、そしてそれがスキャン行為を通してもすばらしいという話が事実であることを確認した瞬間だった。上の写真は最後の最後の夏の残り香が秋に溶け込んでいった10月の晴れた午後に撮ったものだ。きらきらと輝く光の色が匂い立つ感じが伝わるとよいのですが。

 

もちろん、Summicronはカラー描写もすばらしい。まずはフィルムでの作例から。ポジに写り込んだ油絵のような光線は、僕の腕では正しくスキャンできなかったので、ネガから作った絵を掲載しておきます。

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Leica M3, Summicron 50mm

 

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Leica M3, Summicron 50mm

 

続いてデジタルでの作例。このレンズの光学設計は古いのですが、デジタルでも十分に使えます。なにせあのApo Summicronが発売された後も堂々と併売されてるわけですからね。

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Leica M9, Summicron 50mm

 

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Leica M9, Summicron 50mm

 

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Leica M9, Summicron 50mm

 

開放からリアルな写りのこの優等生レンズの唯一の注意点が逆光特性。意外と大きくフレアがでます。ところがこのフレアがなんともドラマチック!基本性能が素晴らしいだけに、ちょっとしたアラが逆に魅力的。優等生の仮面を脱いだ大胆な官能性が素晴らしいです。

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Leica M9, Summicron 50mm

 

まとめ

とにかくSummicron 50mmは開けても絞っても解像度が高くてリアル。なのにコントラストが高すぎてシャドーやハイライトが飛んでしまうこともない、美しいトーン描写。小さくて切れ味がよくて美しい。もう完璧。

NoctiluxやSummiluxシリーズを堪能した今でさえ、このレンズに戻ってくるととても心地いい。上のクラスのレンズを持っているから下のクラスは整理しようなんて発想は全く出てこないですね。というか、開放f値の違いで上とか下とかないのがLeicaレンズ。そこが面白いく、そして恐ろしいところですね。

最後に細かいことを一つ。僕のレンズ、保護フィルターとして純正のUVフィルター着けているんだけど、このフィルター枠、厚みがあって、着けると全長が3-4mm伸びます。おまけに収納時のフードの先端とフィルターに着けたレンズキャップとの間に隙間が出来て、なにかにひっかかった場合にレンズキャップが外れやすい。Tipsとしてですが、フィルター装着時にレンズキャップするときは、フードを完全にひっこませずにレンズキャップとフード先端をぴったり合わせること。こうするとキャップが外れにくいです。

 

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これだと段ができてしまうので、

 

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こうやってちょいとフードを伸ばします。

 

 

Elmarit 28mm f2.8 ASPH レビュー

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エルマリート28mm f2.8 ASPH reviewブログ

 

はじめに

昔書いたレビュー記事をはてなに引っ越しさせてます。カメラについては時代背景もあるので昔のまま、レンズについては再編集してお届けします。

 

プロローグ

ライカ導入直後に50mmレンズを入手し、その後に脈絡なく広角レンズを数本買い漁った後、ふと我に帰る。これは沼だ!落ち着いてシステマチックに必要なレンズを考え抜いた結果、Elmarit 28mm ASPHを購入。2010年のことだ。よってこのレビューは2016年にリニューアルされる前の11606についてのレビューになります。

 

28mmレンズ好き

28mmは自分にとって初めての広角レンズで、ずいぶん長い間、広角は28mm一本で対応していた。50mm好きの僕にとって35mmは中途半端で、かといって24mm以下の強い遠近効果は好きになれず、目の前そのままが切り取れる28mmが好きだった。しかし、一眼レフ用の28mmはレンズ設計の難しさもあり、どれも似たようなもの。個性を求めるものでもなく、好きだったにもかかわらず、だいたいスタンダードなものを一つ持っているだけだった。

ところがMシステムは広角に強い。今では28mmだけで4種類も出ている。当時はライカ純正の28mmはSummicronとElmaritの二種類だけだったが、社外品にはコンタックスGシステムで伝説になったBiogonなどもあり、選択が悩ましくて嬉しかった。結局、まずは王道のライカレンズ、しかもカバンにいつでも収納できる小型レンズが欲しかったためElmarit 28mmに決定。

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Leica M9, Elmarit 28mm f2.8 ASPH (11606)

 

凄まじい写り

撮影した画像はM9のプアーな液晶で見ても明らかに強烈だった。

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Leica M9, Elmarit 28mm f2.8 ASPH (11606)

 

なんというリアルさ!

評判通りシャープで硬い。いわゆる線が太いというのはこういうことだというのがよく分かる写りだ。5Bの鉛筆で力強く描いたようなデッサンと言ったらよいだろうか。人の肌とか撮った場合、なまめかしさよりリアルさが前に出てしまうかも。逆にシャープさを生かして風景とると、ぱっきり映る。ふんわりしたものでなく、凛とした雰囲気のものの方が被写体として向いている気がする。

こういう強烈な個性を持った28mmレンズは、日本製の一眼レフ用レンズでは体験したことがなかった。そもそも種類も少なく、設計も古いままのものが多かった上に、用途も多様なのであまり個性を狙うような設計もできないのだろう。マニアックな人たちに向けた強い個性を持つライカという製品の面白さを、このレンズは僕に教えてくれた。

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Leica M9, Elmarit 28mm f2.8 ASPH (11606)

 

では、さっそく描写を詳しく見てみましょう。

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適当に撮った公園の植物ですが、エッジ立っているのに、みずみずしさも表現できていて、好きな描写。まさにLeica ASPHの描写です。でもって、ピンの来ている部分を100% cropすると、

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こんな具合に、開放からリアルな描写。表面の感じが現実のまま目の前に再現されるような写り方。傾向としてはSummicron 50mmに近い気がする。この2本はどちらもコンパクトだし、いいコンビネーションだと思う。

ちなみにこのレンズ、開放だと周辺が若干甘いです。絞ると改善されますが。MTF見てもその傾向。リニューアルされた11677もMTFで見るとあまり大きな変化は無さそう。海外サイトのサンプル見ても、SLでは大きく改善してますが、M240だとたいして違わず。一旦リニューアルは見送ってます。開放で隅まで解像させたい場合はSummicronですね。ちょっと大きく重くなりますが。(Summicron28の新旧比較はこちら参照 http://www.slack.co.uk/leica-m-resolution.html)。

 

コンパクト

外観はコンパクト。さすがM型Leica現代レンズで最小最軽量。全長は30mmで、フード無しだと常用で鞄に放り込むのに気にならない厚さ。絞りやフォーカスリングも薄いけど他のLeicaレンズと同じ感触でグッド。フードはプラスチック製で、質感の評判はよくないけど、軽量だし、これはこれでよいのでは(リニューアルされた11677では金属フードに変更)。気に入ったのはフード外したとき用のレンズキャップ。これ、軽金属製でLeicaの彫り込みがあり、さらに内側にはフェルトが張ってあって、非常にかっこいい。おもわずSummicron 50mmにも付けてみたんだけど、残念ながら装着不能。 

コンパクトということは機動性が高いということ。M9に薄いElmarit28をつければ、当時は完全に世界最小のフルサイズデジカメ。このレンズとともに世界中を回りました。どこにゆくにも気軽にカバンに放り込んだり、肩にかけたり、ストラップ巻いて片手持ちしたり、異国の街の放浪には最適なパートナーでした。

F8に絞り込んで、なめらかなフォーカスリングを回してピント指標を3mに合わせればピント合わせ不要(この基本動作すら、今のAFレンズでは難しい)。そのまま街を放浪し、気に入ったシーンがあればレンズ向けてパシャリ。AFでのピント合わせが不要なのでタイムラグゼロ。これはクセになる。しかも明るいレンジファインダーレイテンシーもブラックアウトもゼロ。完全に街に溶け込みながら撮り歩く快感。

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 Leica M9, Elmarit 28mm f2.8 ASPH (11606)

 

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 Leica M9, Elmarit 28mm f2.8 ASPH (11606)

 

まとめ

Elmarit 28mm f2.8 ASPHは、小さい・高性能・広角という、まさにライカらしいレンズ。解像した部分の凄まじい写りは癖になる。開放での周辺部での甘さが欠点といえば欠点だが、そこを解像させたい場合は絞ればOK。コンパクトで似たような切れ味ある写りのSummicron 50mmとの組み合わせでこれからも世界中を回ります。